放送日:2020年11月6日

「フルスペクトルの光と音 その1」

 今回は「フルスペクトルの光と音」と題して、お話していきたいと思います。
 一般には馴染みのない「スペクトル」という言葉ですが、ご存知でしょうか?
 その語源は「見えるもの」「現れるもの」といった意味で「フルスペクトルの光」とすると、その言葉通り“全てを現わす光”という意味になり、この自然界では「太陽光」や「炎」「白熱電球」がこの「フルスペクトルの光」にあたります。

 電磁波の中で人間の目で捉えられる光の波長域を「可視光」といい、この領域には「紫、藍、青、緑、黄、橙、赤」と連なる光の色で構成されています。昔、理科の授業でプリズムを使った実験を覚えている方もいらっしゃると思いますが、太陽光をプリズムに透過させることで「虹の七色」が現れるといったものでした。つまり「フルスペクトルの光」とは、これら全ての色の波長を良い調和で構成された光となります。
 光はいくつかの色を重ねていくと白色に近づく特性があることから、現在、普及しておりますLED照明は、光の3原色である「赤、緑、青」を重ね「白色」を生み出せたことで、人工照明として実用化され現在に至ります。しかしながらLEDの光で照らされたお部屋や物を見て  今までに何か違和感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 現在、太陽光に近い色の再現性を求め、演色性の高いLED照明も増えておりますが、一般的には、全ての色を持ち自然な見え方で再現する「フルスペクトルの光」ような質の高い照明ばかりではない為、光の色に「深み」や「厚み」が足りず、その照明の光を使う場所によっては、人の目に入ると違和感や、居心地の良し悪しに影響がでる場合があるのです。

 光の色に「深み」や「厚み」が足りないと違和感を感じるといいましたが、音も、「深み」や「厚み」なんて言葉で表現したりします。
デジタル音源の音と、アナログ音源やコンサートなどで生で聴く音とでは、音が違って聞こえませんか? これは、実際に人の耳で聞きとれる周波数だけを切り取ったデジタル音源に比べ、生演奏では人の耳では聞き取れない波長音域の響きを肌で体感することで「深み」や「厚み」といった感覚として捉えるからともいわれています。
 このような音を「フルスペクトルの音」というかはわかりませんが(笑
 現在でもアナログレコードを購入される方がいて、いまでも実際に増えているそうです。理由はわかりませんが、デジタル音源にない音の「深み」や「厚み」を見えない良さとして感じ、求めているのかもしれませんね。

 光についても同じようなことがいえ、光源から熱や紫外線をなくし、人の目に見える「可視光」の中で人工的つくられたLEDの電球色と「可視光」以外の波長を含んだフルスペクトルの光を持つ白熱電球を比べると、同じ電球色の「あかり」でも、やはり「深み」や「厚み」が違って見えます。
 そう考えると、見えない「光」や、聞けない「音」が創りだす人が感覚として捉える空気感に共通性を感じます。
 「光」や「音」も今後ますますデジタル化が加速いくことで、私たちの生活も便利になり様々な恩恵を受けてはいますが、アナログからデジタルに変わったことで、失いかけている何かを損なうことなく、進化していってほしいと期待します。この見えない空気感を大切な事に捉え日々の「あかりの演出」に活かしていければなと思います。