放送日:2020年11月13日

「フルスペクトルの光と音 その2」

 今回は前回に引き続き「フルスペクトルの光と音」と題しまして、光と音の意外な関連性について少しお話してしたいと思います。

 一般には馴染みのない「スペクトル」という言葉ですが、その語源は「見えるもの」「現れるもの」といった意味で「フルスペクトルの光」とすると、その言葉通り“全てを現わす光”という意味になります。
 この自然界では「太陽光」や「火の光」などがこの「フルスペクトルの光」になります。
 
 電磁波の中で人間の目で捉えられる光の波長域を「可視光」といい、この領域には「紫、藍、青、緑、黄、橙、赤」と連なる光の色で構成されています。昔、理科の授業でプリズムを使った実験を覚えている方もいらっしゃると思いますが、太陽光をプリズムに透過させることで「虹の七色」が現れるといったものでした。つまり「フルスペクトルの光」とは、これら全ての色の波長を良い調和で構成された光となります。

 光はいくつかの色を重ねていくと白色に近づく特性があることから、現在、普及しておりますLED照明は、光の3原色である「赤、緑、青」を重ね「白色」を生み出せたことで、人工照明として実用化され現在に至ります。しかしながらLEDの光で照らされたお部屋や物を見て今までに何か違和感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 現在、太陽光に近い色の再現性を求め、演色性の高いLED照明も増えておりますが、一般的には、全ての光色が丁度良い比率で構成された自然な見え方で再現する「フルスペクトルの光」ような質の高い照明ばかりではない為、自然の光のような「深み」や「厚み」が足りず、LEDのようなデジタル光源の使い方によっては、人の目に入ると違和感や、居心地の良し悪しに影響がでる場合があるのです。

 余談ですが、先程「虹の七色」について少しお話しましたが、色の区別がなく連続した色の変化からなる「フルカラー」ともいえる虹色が、なぜ虹の7色といわれているかご存知でしょうか?
実は、虹色の数は世界共通して7色ではなく、国や時代によっては「青、緑、赤」の3色や「紫、青、緑、黄、赤」の5色とする考え方もあるようですが、日本では明治時代に伝わってきたニュートンのある説が基になって学校教育の中で、虹は7色であると広まったといわれています。ニュートンといえば、「万有引力の法則」など力学の研究で有名ですが、実は光学の研究でも有名な科学者だったといわれております。
 ニュートンもプリズムなどを使い光の研究を行っていた当時、実際に7色として見ていたわけではなく、色と色の間に区切りがない無数の色の帯のように見ていたのですが、それら無数にある色を学術的に説明する方法として使ったのが「音楽」といわれています。
 
 ニュートンの時代300年程前のヨーロッパでは、音楽が学問のひとつで、音楽と自然現象を結びつけることが大事なことと考えられていたことから、光の帯の各色幅を「ドレミファソラシ」の7つの音階の間と高さに重ね合わせ光色の仕組みを結論づけたようで、この研究が基になり、「紫、青、緑、黄、赤」の5色と考えられていたものに、藍色と橙色を加え「フルスペクトルの光」を定義付け「虹の7色」が誕生したというわけです。

※色表や音階図を見ながら・・・

 さて、光と音、この二つ、一見全く関連がないように思いますが、実は意外なところに関連性があり、そう考えると、「光」や、「音」を創りだす人が感覚として捉える空気感にも共通性や面白さを感じてしまいます。

 調和のとれた心地良い作品→ミュージックビデオやアニメなど

 やはり調和のとれた心地良さとは、自然なアナログな光「フルスペクトルな光」の中に存在するのだと考えます。私たちが過ごす空間にも、この見えない空気感を大切に捉え、心地良い「あかりの演出」に活かしていければと思います。