放送日:2019年10月11日

「ブラケットライト その1」

 今回は、壁に取付ける照明器具「ブラケットライト」について考えてみたいと思います。
 
 建築的な言葉でブラケットとは、壁や梁、柱などから持ち出した片持ち形式の部材をさします。つまり、壁に取付けた部材に照明器具がついたものが「ブラケットライト」といいます。また照明的な言葉では、ブラケット器具また、通称でそのままブラケットという場合もあります。
 さて、ブラケットライトが使われる理由としまして、「天井に照明器具が付けられない」、「壁などの鉛直面や手元に明るさが欲しい」、「装飾効果を高めたい」など様々あります。が、では住宅照明ではどうでしょう?・・・あまり使われてない器具に思われがちですが、例えば、洗面化粧台やバスルーム、玄関外部のポーチ灯、また階段などによく使われていたりします。皆さんのご自宅ではどうですか?
 欧米ではよく使用される「ブラケットライト」ですが、日本の住宅において壁付け照明は、いま例に挙げた場所や用途に応じては使われたりしますが、リビングなどの主要な居室に使われるケースは少ないのではと感じます。また設置されていても、実際の生活光源として使用されなくなる器具となるケースも考えられます。
 ・・・それはなぜか? いくつか理由を挙げると、まずブラケットを設置する場合、建築設計のできるだけ早い段階で取付け位置をきめなくてはなりません。なぜなら器具に給電するには、もちろん配線工事が必要な為、下地ボードや壁紙などの内装仕上げを行った後に安易に位置の変更などができない事にあり。つまり図面を見て位置を決める際、慎重に建物完成後の空間イメージを明確にして計画しないと問題が生じる可能性があるのです。例えば、設計段階で決定した取付け位置に後から家具や絵画の設置また建具の変更などによって、見た目にもバランスの悪い空間になるケースがあり、また被照射面の内装材に濃い色などを安易に選択したことによって思った照明効果が得られないケースもあるでしょう。
 このことからも、「変更のきかない器具=使いづらい器具」と考えられることで天井照明主流の日本では嫌煙されることが多いのではと考えます。

 しかしながら、1日のタイムスケジュールの中で使用する住宅照明において、夜間の適正な光環境を考えますと、太陽が水平線に沈む夕日の灯りのように、赤味を帯びた適度な明るさで横から照らす光は、人の本能的な働きからみても1日の疲れを癒しリラックス効果の高い質の高いあかりと言えます。・・・ただ、使い辛いからといって「ブラケットライト」を選択しないとすれば、あまりにもナンセンスな選択といえます。
 照明効果のみならず、省エネの観点からも、高い効果を得るブラケットライトの利用は、これからの日本の住宅照明において大きな期待を感じます。