放送日:2019年10月18日

「ブラケットライト その2」

 前回より、主に壁面に取付ける照明器具「ブラケットライト」についてお伝えしております。
 欧米では主要な照明器具の一つとして様々な用途で使われる「ブラケットライト」ですが、日本の住宅の中でいえば、特にリビングルームなどの主要な居室で使われるケースは少ないように感じます。・・・それはなぜか?
 その理由に、建築設計のできるだけ早い段階で完成の空間イメージを明確にしてから設置しないと、工事中の一部変更(例えば家具・絵画の位置、建具・間取り・天井高さ)などによって、見た目にもバランスの悪い空間になったり、また被照射面の内装材に濃い色などを安易に選択したことで思ったような照明効果が得られないなど、様々な問題が生じやすい器具といえます。その為に、どんな時・場所でも部屋の隅々まで明るく照らす天井照明を半世紀以上使い続けてきた日本の住宅照明では「変更のきかない・予測がつかない器具=使いづらい・失敗しやすい器具」といった既成概念から、設計者の中でも嫌煙されがちな器具のひとつになっているのでしょう。
 しかしながら、1日のタイムスケジュールの中で過ごす住宅において、夜間の適正な光環境を考えますと、日中の太陽光のように頭上から明るく照らす天井照明だけではなく、陽の沈む夜間、太陽が水平線を夕日に染めるように、照明器具の光も赤味を帯びた適度な明るさで横から照らすことは、人の本能的な働きからみても1日の疲れを癒しリラックス効果を高める質の高いあかりと言えます。・・・つまりただ、使い辛いからといって「ブラケットライト」を選択せずに天井照明ばかりに頼っているのであれば、あまりにもナンセンスな選択といえます。
 照明効果のみならず、省エネの観点からも、将来的に高い効果を得るブラケットライトの利用は、これからの日本の住宅照明において大きな良い変化をもたらすひとつの方法といえます。
※それでは「ブラケットライト」の取付け位置や選び方で失敗しない為の方法をいくつかお伝えします。
・高さのバランス
 ・配光の確認 → その照明効果(セード形状・素材)
 ・被照射面の確認 → その明るさ感
 ・器具の意匠性 → その機能性とのバランス(出幅、大きさ、セード)
 ・多灯分散による時間帯に応じた主照明としての考え方 etc
 以上のような失敗や問題が生じないよう器具を選ぶときは器具のデザインと取付高さなどの関係を整理して、空間の意匠調和に特に注意して質の高い「あかり」を楽しみましょう