放送日:2019年8月16日

「これからの照明計画 その2」

前回に引き続き「これからの照明計画」と題しまして、住宅照明の在り方など これからの暮らしの快適さや魅力を高める為の考え方をお伝えしていけたらと思います。

 「照明計画」とは・・建物を建築する際、照明器具を利用して光と影をコントロールすることで、空間の快適さや魅力をより高めるような設計上の工夫をいいます。
 
 しかしながら、多くの照明計画では、未だに、どの部屋にどのくらいの明るさが必要か?それによって、どんな器具を天井に何台取付けるかといったように、まず部屋全体の「明るさ」の確保を最優先として平面上で部屋の隅々まで明るくなるように照明計画されることが多々みられます。これでは、ただ部屋を明るくするだけで、「あかり」による本質的な暮らしの快適さは生まれません。

 主に高度成長期以降、半世紀以上も明るい天井照明の中で暮らしてきてしまった日本人にとっては、照明は夜、部屋をより明るくするものと、当たり前のように思うかもしれませんが、時には適度な暗さも人の暮らしには重要になるのです。
 住宅は、日中の仕事や勉強を終え、夜に安心して心と身体を休め、翌日の活動に備える大切な空間といえます。そこで行う休息に、昼間のオフィスや学校のような、隅々まで明るい空間は必要ないのです。一日の疲れを癒し、食事やお酒を楽しみ、リラックスするには、むしろ眠りの世界に近い、薄暗がりのほうが心地良く、健康面においても優位に働きます。
 適度な暗さも、人の生活にはとても重要な「寛ぐあかり」を演出するのです。

 最近、「働き方改革」なんて言葉をよく聞き、社会的にも休みを取る動きになっていますが、働くことを美徳としてきた年代の方々にとっては、休み方がわからない方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか? 休日にどこかに出かけたり、家でゴロゴロするだけが、休息の仕方ではありません。ストレス過多な現代、いかに日々の生活の中で、効果的に疲れを取り、心身共にリラックスする時間を創れるかが、長い目でみると上手な休息の取り方なのだと考えます。
 その日々の生活の中で創る癒しの時間の演出に「あかり」がとても良い役割を行うのです。

 次回は自宅で出来る具体的な照明計画の方法をお伝えできればと思います。