放送日:2018年2月16日

「光の反射と素材 その2」

 前回に引き続きまして、「光の反射と素材」のお話をしたいと思います。
 皆さんがお住まいの住宅や街の店舗、施設など、主に建物内部の空間意匠を形づくる内装に使用される素材がありますが、この内装材を選定する際、その空間に設置された照明による反射率を気にされたことはありますでしょうか?
 この内装材の反射率は空間づくりにおいて、いわゆる心が落ち着く・落ち着かないといった居心地の良さを決定づける内容となります。
 そこで今回は、照明による反射率を考えた内装材の選定、考え方など、いくつか紹介できればと思います。

 我々が過ごす様々な建物空間には多種多様な素材が使われており、それぞれに反射率が異なります。鏡やガラス、ツヤのある表面加工が施された素材は反射率の高い材料となり、また逆に、土壁や和紙、ザラザラとした表面加工が施された素材は反射率の低い材料となります。そしてまた、反射率は表面の質感だけでなく色の明暗によっても変わります。
 例えば、ブティックやジュエリーショップなどの内装には、磨きのかかった石、化粧板、ガラス、ステンドア、鏡など、反射率70~80%を超える素材が多く使われ、都会的で洗練された非日常を演出しています。このような店舗空間では、反射率の高い素材を多く使用しても良いのでしょうが、主に住宅など、一般的に寛ぎや居心地の良さを求めるような空間では、反射率の高い素材を多く使うと落ち着かず長くいると大変疲れることになります。
 では、なぜ反射率が高い素材を使った空間にいると落ち着かなくなるのでしょうか?

 日本人の平均的な肌の色の反射率は50%とされ、ある説に、なぜ和室に入ると心が落ち着くのかというと、柱・畳・土壁・天井材など、そこで使われている材料の反射率が肌の色と同じ50%以下の材料だからと言われています。つまり、この考えからいえば、主に住宅など寛ぎを重視する空間には和室のような反射率の低い材料を取入れることが最適となります。しかしながら昨今では、住宅の内装も欧米化しており、和室はあってもモダンな装いで、壁や天井にも白い壁紙など反射率の高い素材が好まれ、中には店舗のような内装を好む方も多くいらっしゃいます。このような空間では、寛ぎは得にくく、緊張感のある空間となってしまいます。そこでお勧めなのは、反射率のバランスを取る方法です。
 
 全般的に白を基調とした反射率の高い空間であっても、そこに設置する家具や建具、眼に入りやすい一部の壁面に反射率の低い素材や色を使うことで、反射率の調和を図れ、気持ちも和み、長時間いても居心地の良さを保てる寛げる空間づくりができます。
 そして、素材の選定とともに最も重要になるのが、それら素材の表情を印象づける照明の光の色や照らし方になります。そこで次回は「照明と素材の相性」についてお伝えしたい思います。