放送日:2018年2月9日

「光の反射と素材 その1」

 今回から、「光の反射と素材」と題しまして、皆さんがお住まいのご自宅や私たちの街に建つ様々な建物から見えてくる。空間の印象を決定づける「光の反射」と「素材」の関係性について考えていきたいと思います。

 まず、ここで言う「光の反射」とは何か・・・?

 簡単にいえば、光が物体に入射して跳ね返る現象となるのですが、見え方としては、大きく分けて「鏡面反射」と「拡散反射」の2種類があります。
 「鏡面反射」とは、言葉通り鏡やガラス、波のない水面などのような、凹凸がなく滑らかで平らな面に光が入射した際、その入射角度と同じ角度で跳ね返り、光や物、色を映り込ませるような現象となります。
 「拡散反射」とは、平坦ではなかったり、ザラザラした表面などで拡散して跳ね返る光の反射のことで、入射光が様々な角度で反射しているかのように見え、物体そのものの色や起伏が現れる現象となります。
 
 私たちが過ごす建物にある素材で説明しますと、鏡や透明ガラス、磨きのかかった石、またツヤ有りの塗装や表面加工が加えられたフローリングや家具、これらは鏡面反射の度合が高い素材となり、それとは逆に、ザラザラとして凹凸のあるタイルや石材、土壁、またツヤ消しの塗装や表面加工が施された壁紙や木板パネルなど、これらは拡散反射の度合が高い素材となります。
 このように、「鏡面反射」から「拡散反射」の間で、私たちが過ごす建物空間は、光の反射度合いの異なる様々な素材によって構成されており、その物質表面の仕上げによって、反射の度合い、反射率が異なります。また、反射率は光の強さ・照らし方、また素材の色によっても大きく変わります。

 空間に広がる光の印象は、空間を構成する素材の色や材質に大きな影響を受けるとともに、その素材そのものの見え方も、どのような光に照らされるかによって大きく変化します。つまり、「光」と「素材」は相互に作用する関係であり、外装もそうですが、特に内装材と照明の関係性を捉え間違えると、居心地の悪さに繋がるケースが起こり得ます。
 例えば、非日常を演出するような店舗では反射率の高い素材をふんだんに使用しても良いかもしれませんが、普段暮らす住宅に、このような反射率の高い素材ばかり使ってしまうと落ち着かず、不快な反射として目に映り居心地は悪くなるでしょう。
 まずは、建物空間の使用目的やそこで行われる行為を捉えて、「光」と「素材」とを相互に考えることが、空間の質を上げる為には、とても重要な考え方となります。
 次回は、反射率を考えた内装材の選び方など、お伝えできればと思います。
新築や改装などのご参考になれば幸いです。