放送日:2017年9月22日

「暗さのススメ」

 今回は「暗さのススメ」と題しまして、ご自宅で創り上げる効果的な「暗さ」の考え方や創り方など、少しお話できたらと思います。
 この富山県は連続で持ち家率No.1になるなど、家を建てることへの関心が他県に比べても高いようで、全国平均から見ても、家を建てる環境が良いようです。その為、皆さんの中にも、これから家を建てられる方や、現在計画中の方など沢山いらっしゃると思います。
 新しく家を建てる時、夢を形にする為、設計者の方に様々な思いや条件を伝え計画を進めていくことになりますが、その計画中で、部屋数や間取りはもちろんのこと、屋根形状や外壁などの外装仕上げ、壁紙や床材などの内装仕上げ、キッチンや洗面台、トイレなどの衛生設備機器、また家具や建具の仕様等、そして照明器具と決定すべき内容は他にもたくさんあります。
 このようなたくさんの決め事は、一般の方にとっては慣れない疲れる作業となり、希望する箇所(奥様でいえばキッチンエリア等)や衛星設備機器や内装などの仕上げ材など見える箇所以外は、設計者の提案にほぼお任せしていくことも少なくないようです。そんな時、よくお任せとなるのが「照明器具のあかり」の選定です。
 
 照明器具には、様々な種類やデザインの器具があることで、見た目の器具デザインの決定や間接照明・ダウンライトを付けたいなどの希望はいえるものの、ではそれらの照明器具の配置と明るさ、照らし方によって、実際どのような明るさ感や雰囲気になるか完成をイメージできる方は、一般の方はもとより設計者の方でも少なくなく、設計者にお任せとしたことで、暗さへのクレームを避ける為、過度な照明計画となる傾向があります。その為、完成した家でいざ生活を始めてみると、使い辛くほとんど使わなくなる照明があったり、明るすぎたりと過度な照明計画に気づくことになります。
 その理由のひとつに個々の好みの明るさ感に差があることが挙げられます。細かなことで例えると、夜寝る時に常夜灯を付けたままで寝るのが好きな方もいれば、消さないと寝れないという方もいます。また朝の時間帯に照明と付ける人、付けない人などなど、同じ家に住む家族の中でも微妙に「あかり」による好みの明るさ感が違います。
 このような好みの明るさ感の違いによる弊害が顕著に現れる箇所が、リビングルームやダイニングルームといった家族が集う空間となります。このような空間でよく見かけるのが誰にとっても暗さを感じない明るすぎる照明計画です。
 しかしながら、リビングルームやダイニングルームといった家族が集う空間は、トイレや浴室などの単一の行為を行う部屋と違い、滞在する人数や各行為、また時間帯によっても居心地の良い明るさ感が変化します。このような、様々なシチュエーションに対応できる「あかり」の計画のひと工夫「暗さの演出方法」があります。
 例えば、リビングルームやダイニングルームといった家族が集う空間には調光機能を取り入れましょう。主照明のあかるさ感を変化させる設備を整えることで、様々なシチュエーションに対応でき、さらには、光源高さを低くしたブラケットライトやフロアスタンド等の局部照明と併用して組み合わせることで、演出の幅を広げることができます。
 
 暗さを創り出す機能を備え試してみることは、従来の既成概念に囚われた明るすぎる照明環境に一石を投じる機会として、新たに豊かな環境創りの第一歩となるでしょう。