放送日:2017年1月13日

「和室のあかり」

 前回「床の間のあかり」のお話をさせていただきましたが、ところで今、皆さんのご自宅に和室はありますでしょうか?
 数十年前まで日本の住宅では、戸建はもちろん集合住宅でも家の中に和室があるのは当たり前のことでした。しかしながら昨今、特に若い方の生活スタイルや趣向の多様化によって新築・改装される一人暮らしのアパートなどで和室の部屋はほとんど見かけませんし、ご自宅を新築される方の中でも居室に和室を設けない方が増えている傾向にあります。
 また、既存の和室を洋室にリフォームするなんてケースも多くあると思います。
 このような時代の流れの中、今後ますます無くなっていく傾向にある住宅の和室ですが、今回から、この住宅の和室について、建築・あかりの観点で少し考えてみたいと思います。
 そもそも、なぜ和室が若い世代に敬遠されるようになったのでしょう?
 時代背景など理由はいろいろあると思いますが・・・例えば、洋風の家の中に和室があると違和感を感じる、部屋がなんとなく暗く感じる、単純に必要性を感じないからとか、様々です。もちろん若い方の中でも、逆に和室の見た目や感触に精神的な落ち着きを感じ、畳のある空間を好む方もいらっしゃいますし、ご両親や来客の方の為、小さなお子さんの為のスペースとして考えられる方もいるようで、住まわれる方の感覚や好みにも大きく左右されるようです。
 その為、今では本来の形式に合わせた和室ではなく床だけが畳で、壁・天井をクロス貼りとした「洋和室」「モダン和風」なんて内装空間が増えているのが現状です。

 あかりの話になりますが、数十年前の和室の照明器具といえば、木や木調樹脂の骨組に乳白アクリルや和紙材で覆った和風の傘に1灯の器具で明るさを確保できる天井吊下げ型のものが多かったと思われます。
 しかしながら、先ほどお伝えしたように和室の変化に伴い照明器具も天井吊下げ型から天井に直に取付けるタイプの和調のシーリングライトが主流となり、最近では何灯かのダウンライトを和室の主照明とし、間接照明を取り入れたりと、照明も多様化してます。
 このような変化の中では、建築内装と照明を相互に考えて、個々に調和をとる空間デザインが今後求められます。そこで次回は「新しい和室の照明」についてお伝えします。
 余談ではありますが・・・
 20数年前、留学先のサンフランシスコで部屋の一角にただ畳のようなパネルを床に敷いて、「ジャパニーズスタイル」だと言っていたアメリカ人の友人がいました。当時は正直、日本人として、その空間にすごく違和感を感じていましたが、いま思い返すと現在の簡素化した現代和風の洋和室そのままだなと・・・面白くも感じる次第です。