放送日:2016年11月25日

「店舗のあかり」

 あと数日で11月も終わり、クリスマスが近づくにつれ、年の瀬の様々なイベント事も重なって、これから街もより賑やかに彩られ、外を出歩く機会も増えていく事と思いますが、そんな賑わいを見せる「街のあかり」の主役といえば、ネオンサインや煌びやかに光る電飾、明るく洗練されたディスプレイで街を彩り染める「店舗のあかり」となるのかもしれません。そんな私たちの街を賑やかに彩り染める「店舗のあかり」についてお話をしたいと思います。
 その昔、電灯照明もないような江戸時代頃・・「お店のあかり」といえば、見世棚と言われる台に陳列した商品を自然光で照らして商いを行っていました。今でもその名残りを各地で行われている朝市などで見られます。もちろん、夕方になれば、蝋燭や行燈などの灯りを補助的に使用していたでしょうが、日中でも天候や時間帯によって明るさもかなり不安定だったと思われます。・・・そして時代は流れ、戦後間もなくして電力事情が改善され始めると、急速に電灯照明が、夜の街をより明るく灯していきました。
 当時、明るくすることは電気コストもかなりかかり贅沢と考えられていた時代でした。その頃、商店街では隣の店舗より店頭を明るくすることで、店を豪華に見せる事ができ、人が集まり売上げが向上すると信じられるようになっていきました。
 そして高度成長期に入り、本格的に店舗の明るさ競争が始まっていったのです。
 余談ですが、照度を表す単位lx(ルクス)は、英語のLuxury(ラグジュアリー)に語源があるとも一説にいわれており、明るい事=贅沢という意味に繋がります。このような時代背景や理由から、今もなお残る「明るさ至上主義」といいますか、とにかく照明は煌々と明るい方が良いといった考え方の原点になっているのかもしれませんね
 しかしながら、従来の白熱電球や蛍光灯から電灯照明の主役がLEDになり、光色の選定や器具の機能性を向上できたことで、今まで出来なかった演出次第で商品をより魅力的に見せることができます。例えば、光色の波長をそれぞれコントロールすることで、肉や野菜などの生鮮食品の色に合わせ食品をより美味しそうに見せることが可能となり、それらをより魅力的に見せることで購買意欲を高める研究が進んでいます。また、陳列した商品をただ明るく照らすだけではなく、人の感覚や心理に配慮した効果的な店舗内装の元、影を魅せより商品を際立たせる照明演出が求められるようになっています。

 時代はもはや明るさの競争ではなく、いかに商品を魅力的に見せるかを考え、購買意欲を高めるような光の演出が重要になってきているのです。
 ひと昔前、商店街で店の明るさを競っていったように、お店で「あかりの演出」を各々で楽しんでみたら、今よりもっと魅力的な街になっていくのかなぁと感じる次第です。