放送日:2016年11月18日

「光のムラ」

 今回は照明計画における「光のムラ」のお話をしたいと思います。
 染色などで、色の付き方にムラが生じることを、色ムラなんていいます。
 ある物を一様に着色する際、ムラのないように塗ると、仕上がりがスッキリ綺麗に見えますが、少しでもムラが生じたり、斑(まだら)な箇所があると、見た目の美しさが半減してしまいます。衣類など少しでも色ムラがあると気になりますよね・・・斑気(むらぎ)という言葉もあるように、斑なものを見ると人の気持ちや心に少なからず影響があるように思えます。
 モネの水辺の絵画など、色ムラや斑模様をあえて使い、色を多彩な集合体として捉え、全体の構図と色彩で美しさを表現した特異な例も中にはありますが、一般的に「斑=ムラ」という言葉には、良い印象はなく美しさからは遠い所にある言葉といえます。

 実は照明の世界でも、照明計画を行う際、光にムラが出ないように心掛けます。
 例えば、長い通路や壁面など灯具を並べて配置する箇所では、同じ明るさと配光特性を持つ灯具を均等感覚に並べるとリズムのある連続性が生まれて見た目にも美しい仕上げりになります。しかし、その並んでいる灯具のひとつでも間隔がずれていたり、照らされている壁の一部だけが違った色や素材になっていると、光にムラができ、見た目にもバランスの悪い仕上がりとなってしまうのです。
 また、一般的に照明器具の光色として使われる昼白色と電球色ですが、これもひとつの空間に意味なく2色を混在して配灯すると斑な光環境となり違和感を感じてしまいます。
 残念ながら、今でも街を歩いているとこのような「光ムラ」をよく見かけます。

 数十年前は、建築空間の中で照明デザインをするというと、この建物にはこの照明器具のデザインが合うといった感じで照明器具を選ぶ発想だった為、決まった建物や空間に照明を合わせるといった流れが主でした、時代が進むにつれ、グレアレスダウンライトといった光源の眩しさ(グレア)を隠す器具やウォールウォッシャダウンライトといった壁面だけを照らす器具など、様々なツールを選択できるようになったことで、光が人に与える影響に配慮し空間そのものを演出するように変わってきました。しかしながら、名のあるデザイン照明やダウンライト、間接照明など、ただその時々の流行りを追った照明計画を行っている空間は今でも後を堪えません。そのような空間には決まって「光ムラ」が存在します。
 光ムラは見た目の悪さと同じく、無意識に人の感覚から居心地の悪さにつながります。
 建物にただ照明器具を足していく照明デザインから、建物と照明をひとつの空間として捉え計画することが、今後、建築デザインに求められていく事と思われます・・・