放送日:2016年7月8日

「光害」

 皆さんは「光害=ひかりがい」という言葉をご存じでしょうか?
宇宙から夜の地球を見ると日本は光で日本列島の形がわかるくらいに明るいことがわかります。夜間の安全性の確保や美しい街の夜景を見ることで心が癒されるなど・・我々に様々な恩恵を与えている夜間の照明ですが、今回はこの光が及ぼす害について少しお話させていただきます。

 私の事務所でも夜ならではの「あかりの演出」のご依頼をよく受けることがあります。
 夜、光がなければ暗く沈んでしまう庭園や建物が、光によって実際浮かび上がる様子を目の当たりにすると、設計の段階で照明効果や完成イメージを予測していても毎回感動させられます。また、高い場所から街を見下ろした街明かり、有名な所でいえば「函館」や「神戸」などありますが、このような美しい街の夜景を見て感動された方もいらっしゃると思います。ただ、これらの光は害になることもあるのです。

 簡単にいうと障害光による悪影響を指します。
 例えば・・・道路灯や街灯などの照明光が明るくて、周辺の農作物が生育不良を起こすことや夜間眠れななくなるなどの悪影響、また、都市部の光が、大気中で拡散されて夜空が明るくなることで天体観測に悪影響を及ぼすことなど、いくつか挙げられます。
 日本では環境省において光害に対する様々な対策が行われており、各都道府県でもこれら光害に対する条例が制定されている所もあります。ただし、これらは天文台がある場所に限られ、多くは星を観測するために制定されているようで、星を見ない人にとっては人事のように感じますが、対象物を照明しているのではなく、大気を照明してしまっている訳ですから、省エネについて関心が高まる中で、それは無駄な光であり、無駄なエネルギーを消費していると言わざるをえません
 照明器具の選定一つとっても路面の明るさを取りたい場合、上空や横に光を拡散する器具を選ぶと、周囲に光っている印象は与えますが、実際は路面を明るくする光はわずかで、後は無駄に眩しい光となり、住宅街などでは家の中に光が入ってしまい、まれに睡眠の障害を生じさせるケースもあります。
 我々照明設計を行う設計者としても常に頭に入れておく必要がありますし、また、夜の街で無駄に明るい夜間照明だなと思ったり、意識されることで、今後このような「光害」を減らしていけるのかなと思います。そうすれば、今は見えづらくなった私たちが小さな頃に見ていたキレイな夜空の星を今一度、子供たちに見せることができるかもしれませんね