放送日:2016年5月20日

「クリューホフの相関図」

 現在、皆さんが日頃使われる照明には、大きく分けて白色の光・電球色の光と2つの光の色があり、この2つの光色の中で生活しているといっても良いかと思います。しかし、この2つの光を生活の中で上手く使い分けている方はかなり少ないと感じます。
 最近では、一般家庭用のLED照明器具においても、手元のリモコンで簡単に明るさやこの2つの光の色を自由に調整できる照明器具が出回っていますが、実際の所どんな風に使われているのでしょう。
 初めのうちはLED機能の真新しさから、明るさや光の色をリモコンでいろいろ変えたりしてみるでしょうが、しばらくすると、光を変化させることもなくなって、今まで慣れた明るさと光の色に定着している方がほとんどなのではないでしょうか?

 確かに、この光を自由に調整できるLEDの調光調色機能は、従来の白熱電球や蛍光灯にはなかった新しい機能で、一般の方が生活の中でこの機能に必要性を感じなければ、使わなくなるのはあたりまえの事かと思います。
 だからといって、この機能が無駄なものという訳ではなく、単純に照明はとにかく明るいほうが良いだとか、電球色より白色の方が良いといったことではないのです。

 我々は長い人類史で、時間によって明るさや色味を変化させる自然光に照らされる光環境の元で生きてきた為に、起床から就寝までの時間軸の中で最適とされる明るさや色味が感覚として備わっていて、心や体にも大きく影響をもたらすとされています。
 このような、光の明るさと色味の最適な関係性を、ある法則に基づいて1世紀前クリューホフというロシアの科学者が相関図にして証明しています。
 一般の方でご存じの方はほとんどいらっしゃらないかと思いますが、この相関図に記載される「快適な範囲」。これを照明の知識のある設計者や照明技術者の方は頭に入っており、今でもこの範囲を基にして快適な光環境を計画するのに使っていたりします。

 その相関図とは、人が快適と感じる明るさと光色の関係性を現わしています。
 例えば、電球色の色温度2500~3000K辺りでは100lx~200lx程度の明るさが快適とされ、それよりも明るくなると暑苦しい雰囲気に感じます。また逆に昼光色などの白系の光の色温度5000~6500K辺りでは500lx以上で快適とされ、それよりも暗くなると陰気な雰囲気に感じることになります。

 このことから、冒頭でお伝えしたLED照明の機能ですが、従来の白熱電球や蛍光灯の器具に比べ、光の選択肢に自由度が増えたことで便利になった反面、使い方を間違えると、この「快適な範囲」からはずれ逆の効果をもたらしているかもしれませんね・・・

 LED照明は日々進化し続けている商品ですから、今後、一般の方々にも使いやすく、生活をより豊かにするアイテムとして開発が進んでいくことを期待したいと思います。