放送日:2015年11月27日

「間接照明・・・その2」

 前回は、主に住宅照明の中で使う「間接照明」についてお伝えしましたが、今回は、住宅照明において「間接照明」の実際照らす上での考え方などお話したいと思います。

 店舗・施設などの照明は建物を使用される方の目的や用途が変わらないことから、ある程度の演出的効果を狙った照明計画を行っても問題はないのでしょうが、住宅照明ではそれとは違いその建物を使用される方が時間によって変化します。
 最初、ご夫婦2人だった家族にお子さんができ、家族が増え、年月を経て年老いていく・・・。
 この過程の中、家族構成、生活スタイル、趣味趣向も変化していくことになります。
 また、一日の時間や使う人、お部屋の用途によって様々な使われ方をすることから、見た目の恰好良さなどの演出的要素よりも、照明にある程度の機能性や必要性を持たせてあげないと、結局使われなくなったり、無駄な照明になる恐れがあります。
 そこで、住宅照明に「間接照明」を上手く取り入れるには、そこに住む方のその照明に対する認識も大事になってきます。

 例えば、最近の施工事例で、テレビの背面となる壁一面を意匠性の高いクロスや内装材で仕上げ、間接照明でその壁を照らすといった写真をよくみかけますが、確かに見た目格好良いですし、もしお施主様に提案したとしても計画が通りやすいでしょう。
 しかし、なぜ? このTVの背面の壁に間接照明なのでしょうか?
家が完成し、最初は真新しさで、この間接照明も使われるでしょうが、おそらく、すぐに使われなくなる事でしょう。なぜなら、お施主様が意匠性は理解できても機能性を理解していないからです。このような悲しい光景を招かれた知人や友人の家でよく見かけます。
 もし、天井照明だけで過ごされてきた方なら、天井照明だけで明るさは確保できることから、わざわざ電気代を使って間接照明を点灯しないでしょうし、夜暗い部屋でTVを見る時、面倒で点灯しない方もいらっしゃるでしょう。
 このような、使われなくなる間接照明をわざわざ計画する意味はあるのでしょうか?

 実は、このTVの背面の間接照明にも意味はあります。
 夜暗い部屋の中で、TVを見る時、周囲の暗さと画面の明るさのコントラストが大きいと目に負担がかかり、知らず知らずに疲労を蓄積します。
 そこで、TVの背面を柔らかい間接光で壁一面を照らし、TV画面とその周囲とのコントラスト差を減らすことで、目に優しい光環境にする効果を計れます。
このように、照らす意味のある光を意匠性だけでなく、その「あかり」の機能性を使う方が認識し見つけ出すことで、家の中での照明の使い方が大きく変わってきます。

 普段、使われている天井照明などの天井から床や卓上を照らす直接的な光とは違い、「間接照明」が生み出すわずかな反射光は、適度な陰影を作りつつ柔らかな光で空間を包みこむことから、見る人に安堵感や安らぎをを感じさせるくれることになります。
 従来の住宅照明にはなかった、このような質の高い「あかり」の照明効果を既存の照明と上手く組み合わせることで、暮らしの中に多様性や変化が起こり今までになかった過ごしやすい時間や空間を見つけることになります。
 それは、これからの暮らしの中で大きなメリットとなり得ます。