放送日:2015年11月20日

「間接照明・・・その1」

 近年、店舗や施設、また電車や飛行機の中など、照明に「間接照明」を取り入れている空間が増えてきています。間接照明が照らす美しい光のグラデーションは、その空間に豊かな表情を作り出すと同時に、見る人に癒しや落ち着いた気持ちにさせてくれたりします。
 住宅照明においても、新築や増改築の時に間接照明を取り入れたいとお考えの方も少なくないと思います。
そこで、主に住宅照明の中で使う「間接照明」とは?・・・という事で、何週かにわけて、今一度「間接照明」について「あかりの演出」の観点から考えてみたいと思います。

 では、そもそも「間接照明」って、どんな照明でしょう?
 たまに光源が直接見えない照明やカバーで覆った行燈のような照明も「間接照明」と説明していたりしますが、照明学的にいえば、これは全般拡散の照らし方であって「間接照明」ではありません
 「間接照明」とはその言葉の通り、直接的ではなく間接的に空間を照らす照明方法で、光源となるランプや照明器具から放射された光のほとんどで、一度天井や壁面などを照らし、その反射光で床面や作業面など空間を照らす照明をいいます。
 その際、照らされた天井や壁などの面に美しい光のグラデーションが浮かび、これぞ間接照明って表情がお部屋のある面に現れ、いわゆるお洒落な感じの雰囲気を見た目作り出すわけですが、この照らされた面に光が反射する時、実は素材によっては、ほとんどの光が吸収される為、残りの少ない反射光で空間を照らすことになるのです。
 お部屋の照度など明るさだけを考えるとダウンライトなどの直接照明に比べると照明効率の悪い照明方法といえます。しかしながら、このわずかに反射した柔らかく広がる光が、空間に安らぎや癒しといった雰囲気を作り、落ち着いた空気感を作ることになります。つまり、天井や壁面に現れる美しい光のグラデーションも「間接照明」の良さのひとつですが、それ以上に面から反射した柔らかな光こそが「間接照明」の最大の特徴であり、目に見えない隠れた良さといえます。
 近年、広まってきたとされる「間接照明」ですが、実は人類が生まれる前から存在しています。それは「月あかり」です。「月あかり」は強烈な太陽の光が月表面で反射した反射光となります。地表に届く明るさはわずか0.5~1ルクスと少ない光ですが、「お月見」などに代表されるように、このわずかな光が醸し出す良さは解っていただけると思います。
 そう考えると「月あかり」は天然の贅沢な「間接照明」といえるのかもですね。