放送日:2015年11月6日

「光と音のフルスペクトル」

 今回は、「光と音のフルスペクトル」と題して、光や音のお話をしたいと思います。
 一般の方には馴染みのない言葉だと思いますが「スペクトル」の語源は「見えるもの」「現れるもの」といった意味で「フルスペクトルの光」となると、言葉通り“全てを現わす光”という事になります。
 この自然界では「太陽光」や「白熱電球」などがこの光にあたります。
 電磁波の中で人間の目で捉えられる波長域を「可視光」といい、この領域には「紫、藍、青、緑、黄、橙、赤」と連なる光の色で構成されています。むかし、学生時代に理科の授業でプリズムを使った実験を覚えている方もいらっしゃると思いますが、太陽光をプリズムに透過させることで「虹の七色」が現れるといったものでした。つまり、太陽光「フルスペクトルの光」とは、これら全ての色の波長を持った光となります。
 光はいくつかの色を重ねていくと白色に近づいていく特性があることから、現在、普及しておりますLED照明は、光の3原色である「赤、緑、青」を重ね「白色」を生み出せたことで、人工照明として実用化されたのですが、皆さんの中でLEDの光で照らされたお部屋や物を見て今までに何か違和感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 現在、太陽光に近い色の再現性を求め、演色性の高いLED器具も増えてきてはいますが、全ての色を持ち自然な見え方で再現する「フルスペクトルの光」ような、光色の幅がなく色に「深み」や「厚み」が足りない為、人の目に入ると違和感を感じる事になるわけです。

 余談ですが、「虹の七色」ついてお話しましたが、色の区別がなく連続した色の変化からなる「フルカラー」ともいえる虹色が、なぜ7色といわれていると思いますか?
 実は、虹色の数は世界共通して7色ではなく、国や時代によっては「青、緑、赤」の3色や「紫、青、緑、黄、赤」の5色とする考え方もあるようなのですが、日本では明治時代に伝わってきたニュートンのある説が基になって学校教育の中で虹は7色であると広まったといわれています。ニュートンといえば、「万有引力の法則」など力学の研究で有名ですが、実は光学の研究でも有名な科学者だったといわれております。
 ニュートンもプリズムなどを使い光の研究を行っていた当時、実際に7色として見ていたわけではなく、色と色の間に区切りがない無数の色の帯のように見ていたのですが、それら無数にある色を学術的に説明する方法として使ったのが「音楽」といわれています。
 ニュートンの時代300年程前のヨーロッパでは、音楽が学問のひとつで、音楽と自然現象を結びつけることが大事なことと考えられていたことから、光の帯の各色幅を「ドレミファソラシ」の7つの音階の間と高さに重ね合わせ光色の仕組みを結論づけたようで、この研究が基になり藍色と橙色を加えた「虹の7色」が誕生したというわけです。
 さて、光と音、この二つ、一見全く関連性がないように思います・・・??
 先程、光の色に「深み」や「厚み」が足りないと違和感を感じるとお話しましたが、音も、「深み」や「厚み」なんて言葉で表現したりします。
デジタル音源の音と、アナログ音源やコンサートなどで生で聴く音とでは、音が違って聞こえませんか? これは、実際に人の耳で聞きとれる周波数だけを切り取ったデジタル音源に比べ、生演奏では人の耳では聞き取れない波長音域の響きを肌で体感することで「深み」や「厚み」といった感覚として捉えるからともいわれています。
 このような音を「フルスペクトルの音」というかはわかりませんが(笑

 光についても同じようなことがいえ、人の目に見える「可視光」の中でつくられたLEDの電球色と「可視光」以外の波長を含んだフルスペクトルの光を持つ白熱電球を比べると、同じ電球色の「あかり」でも、やはり「深み」や「厚み」が違って見えます。

 そう考えると、見えない「光」や、聞けない「音」が創りだす空気感の共通性を感じます。

 今後ますますデジタル化が加速いくことで、私たちの生活も便利になり様々な恩恵を受けてはいますが、アナログからデジタルに変わったことで失いかけている何かを損なうことなく進化していってほしいと期待するとともに、この見えない空気感を大切に捉え日々の「あかりの演出」に活かしていきたいなと思います。