放送日:2022年7月8日

「目に見えない光“UV:紫外線” その2」

 これから夏を迎えるにあたり、太陽光に含まれる紫外線を浴びることで、日焼け、しみ、シワの原因になる事や長年の蓄積による皮膚ガンや白内障など、重度の健康被害を引き起こすなどの短所ばかりが多く知られる紫外線ですが、実は半面、適度な紫外線は健康な生活を送るために必要不可欠な栄養素「ビタミンD」を体内に生成することができ、10種類以上のガンやその他の重大な病気のリスクを軽減するといった長所があるとされ、また、これら「ビタミンD」を効果的に体内に摂取する方法として、短時間の日光浴がとても良いこととされています。
 このような紫外線の長所、短所について前回お伝えしましたが、今回は照明器具を「あかり」の観点から紫外線の長所、短所についてお話したいと思います。

 実は太陽光からだけではなく、皆さんが使用されている照明器具の光源から放射される光にも紫外線は含まれています。
 但し、紫外線が含まれているといっても、太陽光に比べると非常に微量なので重大な健康被害が起きるというわけではないのですが、微量とはいえ紫外線を含む光源を使用した場合、虫を寄せ付けやすく、また照射をしたものに退色・変色を引き起こすなど、生活の中で様々な問題が生じます。
 例えば、夜、街灯などの光に虫が集まっている光景をみたことがあると思いますが、虫は光に集まっているのではなく、実は光に含まれている紫外線に引き寄せられる虫の割合が多いとされ、虫の死骸の付着や見た目の不衛生感が生じます。また、衣類や化粧品を扱う店舗や絵画などを展示する美術館などでは、商品や展示物への長時間照射による退色・変色の問題が生じます。とはいえ、現在、主流の生活光源として普及した「LED光源」では、蛍光灯などの従来光源に比べ格段に紫外線量が少なくなったことで、ひと昔前のように外灯に虫が群がる光景も少なくなり、照明光による色の劣化が軽減されたことで、展示照明の質も上がっております。このような事例でお困りの方は、色の再現性の高いものや機能や仕様の幅も多くなっていますので、LED照明への取替えをおすすめします。

 また照明の世界でも、実は特化した分野では「紫外線」長所を活かし大活躍しています。その代表格として、「殺菌作用」を持つ「殺菌灯」が挙げられます。
 紫外線の光の中でも253.7nm付近の光は、殺菌作用が非常に強いことで知られていて、清涼飲料水や食品容器の殺菌、手術室の無菌化などに応用されておりましたが、これも従来光源を使った紫外線ランプは寿命も短く、殺菌精度もやや低いものでしたが、UV-LEDが2002年に開発されて以降、殺菌効果が期待できる253.7nm付近の光を狭い領域で照射できる殺菌灯の商品化が進み、徐々に市場に出回るようになりました。この殺菌効果のピーク253.7nm付近の光はUV-Cといわれ、通常はオゾン層で完全に吸収される危険な光ではありますが、インフルエンザなどウイルスにも有効で、インフルエンザよりも紫外線に弱いとされるコロナウイルスを99%以上不活化させる光とされ、一昨年メディアにも取り上げられ注目を集めておりました。
 また、前回お伝えしました短時間の日光浴に相当する適度な紫外線放射による新陳代謝や免疫力向上など健康回復を目的とした医療用照明器具が海外では実用化に向け開発がすすめられているとのことです。