放送日:2022年4月1日

「春の光」

 晴れの日も多くなり、暖かい春の日差しが心地良い季節となってきました。
 春の日差しは、夏の日差しのように燦々と照り付けるものとは違い、どこか、のどかで温かく、優しく地表を照らして、春の目覚めとともに自然を美しく輝かせて見せてくれます。そこで今回のあかりの演出は「春の光」について少し考えてみたいと思います。
 では、皆さんの言葉を聞いて頭に浮かぶ「春の光」のイメージはどのようなものでしょうか?

 空気中で景色がぼやけて見えるような拡散されたやわらかい光、新緑を鮮やかに魅せる明るい光など・・・いくつか挙げるとこのような光になるのではと思いますが、
そんな「春の光」のイメージを表す言葉が、日本では昔から、和歌や短歌、俳句などに多く用いられ、日本人固有の感性の豊かさから様々な「春の光」のイメージを表す言葉や表現法が多くあります。

■春霞(はるがすみ)
・春に霧や靄(もや)によって遠くの景色がかすんで見えにくくなる情景をいい・・・
空気の湿度が冬に比べて高くなり、山野に水蒸気が立ち込める。この時期、日中に見る景色は霞み、夜はもやがかったように見える。この現象を昼は霞み、夜は「朧」(おぼろ)と言う。→ 小春日和(昼)、おぼろ月夜(夜)
■朧月(おぼろづき)
・霧や靄(もや)などに包まれて、柔らかくほのかにかすんで見える春の夜の月をいい・・・
 空気中に漂う水蒸気によって光が遮られたり、乱反射して月の周囲に暈(かさ)・光の輪を作り、ぼ~っとかすんだ状態に見せる現象がみられる
風情あるこのような月の表情も、春限定の「月あかり」・・・「春の光」といえます。
■麗か(うららか)
・太陽の光がのどかに照っている様子を表現した言葉。
 春の和やかな光によって、万物が輝いて見えることをいい、冬の寒さに耐えてきた生物が、暖かい春の光を浴びて生き生きとその生命を輝かせているような光景で心が和む風情を表しています。
 
 この他にも、春の季語となるような「春の光」を表す言葉は数多くあります。
暖かい春の訪れを喜び、その風情や情感を「春の光」を表す言葉や表現にのせてきた日本人の豊かな感性は、やはり素晴らしいものだと感慨させられます。