放送日:2021年1月22日

「暗さ・陰影の演出 その2」

 毎週「あかりの演出」というコーナー名で、皆さんの身近にある光についてお伝えしていますが、前回より「暗さ・陰影の演出」と題してお伝えしております。

 現代のような夜も昼間のように明るく照らすことのできる人工照明の中、半世紀以上その明る過ぎる光環境で生活してきた現代人にとっては、暗さに対する抵抗感が少なからずあるかもしれません。
 しかしながら、人工照明によって夜も昼間のように明るい環境で暮らせるようになったのは、たかだか100年程度であり、それ以前の何十万年もの間、人は、昼間は太陽の光、夜間は焚火などのわずかな明かりだけで生活してきた為、夜間、外の暗さに不安や緊張を感じる中で、炎の光を見ると自然と心に安心感を持ち、また、その暖かな光が創り出す陰影を見ると穏やかな昂揚感とともに心が安らぐ気持ちになる効果が心身ともに長い人類史の中で本質的に備わっています。
 つまり人が健康面においても精神的にも本来感じる癒しの「あかり」とは、暗さの中で感じるものであり、その適度な光に照らされ現れる陰影にこそ、心理的に現れる効果があるのです。

 このような癒しの「あかり」をご自宅で再現されるとしたらどうでしょう・・・?

 では、適度な暗さを今の暮らしの中に取り入れ、光と影のコントロールする方法をいくつかご提案します。
・暗順応の理解 → 目が慣れるまで時間がかかる
・明るさを落とす時間帯 → 就寝前の2~3時間から
・2、3パターン以上の夜の明かりの準備 → 1室多灯、光源の高さ
・陰影の創り方 → 光源の位置、配灯方法

 このような照明の考え方、例えばスタンドライトを多用する欧州や店舗のような演出照明を取入れることなど、自宅の照明は、変わった事をしなくても天井に照明があれば良いと思われる方もいらっしゃると思います。
 ただ、日本建築では古来より、四季の光を感じる工夫、障子や行燈に貼られた和紙を介して「あかり」を和らげ室内に取入れるなど、わずかな光の空間に現れる陰影に癒しや美意識を感じ、その光環境から心の豊かさを創造してきたのです。
 
 陰影から生まれる忘れ去られた本来の癒し空間の創造を思い出してみてはいかがでしょう・・・。