放送日:2019年8月2日

「夜空の花」

 今回は、夜空に咲く「夏のあかりの風物詩」花火に関するお話をできればと思います。

 この時期になると全国各地で数多くの花火大会が催され、毎夏楽しみにされている方もたくさんいらっしゃると思います。
 
 日本以外の諸外国では、冬をピークに年間を通じて消費されることの多い花火ですが、ではなぜ?・・・日本では、花火といえば夏といったイメージがあるのでしょうか?
 その理由のひとつには、かつて納涼開始を祝うとともに水難者の供養や水難事故防止を願う水神祭を兼ねた行事「川開き」に花火が使用されていた名残だとされています。
 江戸時代の頃、「川開き」で最も規模が大きく有名だったのが、「両国」で行われていた「川開き」で、8代将軍吉宗の時代には、玉屋と鍵屋が両岸から競って打ち上げる美しい花火を江戸の町の人々が楽しんでいた記録や浮世絵なども多く残こされています。
 今では、「隅田川花火大会」という名前で親しまれ、毎年100万人近い人出がある夏の風物詩となっているようです。・・・花火を打ち上げる時に「か~ぎや~」「た~まや~」なんていう掛け声が出来るのは、今ならギリ「隅田川花火大会」だけなのかもですねw

 このように昔から日本では夏の風物詩として花火が人々を楽しませてきたようです。
 今では全国各地で「隅田川花火大会」のような大きな花火大会から、地元に根付いた親しみのある花火大会まで、規模や内容も様々ありますが、数多くの花火が夏の夜空を彩り染めています。・・・今でこそこの時期、全国各地の花火を求めて旅する花火愛好家なんて方々もいるようですが、「放浪の天才画家で知られる山下清」は日本で最初の花火愛好家ともいわれています。旅のついでに花火を見る訳でなく、花火の為に旅行していたとされ、日本各地の花火大会の光景を作品として残しています。中でも昭和25年に作られた「長岡まつり大花火大会」は代表作として有名です。
 一瞬の花火の儚さを捉えたこの繊細な絵がまさか貼り絵で作られたものとは本当におどろきです。また、戦後まもない時期に作られた作品にもかかわらず埋め尽くすぐらいの人々が花火を見上げているその光景を見ていると、今も昔も変わらず、あの大きな音の迫力と、華やかに輝いて瞬時に消える光の儚さをあわせ持つ日本の夏の花火の美しさは、日本人の心に感動を与えてくれる日本固有の美意識が創り出した世界に誇れる伝統芸術のひとつに感じます。
 
 昨今のデジタル光源などの演出では決して真似のできない、自然発火の妙による音と光の饗宴、夏の贅沢なあかりの演出「花火大会」、今年の夏も、おおいに楽しみたいものです。