放送日:2018年3月23日

「照明のイニシャルコスト」

 今回は「照明のイニシャルコスト」について考えてみたいと思います。
 まず、“イニシャルコスト”とは何か?ご存じでしょうか?・・・新しく事業を始めたり、新しく機械や設備を導入したり、新しく建築物を建築したりする時などに、稼働するまでに必要となる費用のことで、“初期費用”ともいいます。
 つまり「照明のイニシャルコスト」とは、簡単には建物に必要となる、照明器具を設置する為の費用となります。
 例えば建物を建てる時、ご予算に合わせ総建築費が決まり、そこから計画内容に合わせ様々な工事費用を割り当て決められていくのですが、この段階で照明器具にどのくらいのイニシャルコストをかけ、照明計画全体でどのくらいの予算を見込めば良いのか明確にしておくことは、全体的なコストコントロールにおいて重要な工程となります。
 
 照明はエアコンなどの空調設備、キッチンやトイレなどの給排水設備、と同じく電気設備として、一般的には設備工事の分類に含まれる項目なのですが、設備工事費の全体から考えると照明のコストは、他の設備機器工事に比べて明らかに少ない割合となります。しかし、照明にかける予算の割合によっては、完成時の視覚的な印象に大きな差が出ます。また、必要最低限の明るさを確保する照明器具のみ選んでも住むことはできますが、ここで照明に予算を少し割り振るだけで、機能性や快適さ、視覚的な満足度を格段に向上させることができるのです。
 しかし、建築工事の全体的なコストコントロールにおいて、ただ照明を設備の一部ととらえると、予算を多くとるのは難しいといえます。そこで、照明器具をインテリアの一部として予算調整する考え方があります。照明器具を新築時に購入するカーテン・ソファなどの家具と同じように空間を効果的に演出して寛ぎを与えてくれるインテリアの一部として考えるならば、照明は建物の設備としてだけでなく、インテリアの要素を兼ねた費用対効果の高い家具であり、設備となり得ます。
 
 例えば、空間に調和するよう家具やカーテンなど、インテリアにこだわると、既成品であれ、特注品であれ、全体予算も当然増えます。そこで、どんなにこだわりを持って高価な家具や内装仕上材を選んでも、それらを引き立たせる照明がしっかりデザインされてないと、カタログやショールームで見かけるような見栄えにはならないケースが多々あります。
 たとえ一般的な家具・内装仕上材だとしても、照明の選定ひとつで、費用対効果の観点からも少ない予算でもワンランクアップした全体空間の雰囲気を創り出すことが実現できるのです。なので、仮に同じ予算の枠内であったとしても照明を、だた空間を照らす設備としてではなくインテリアの一部として考え、計画の初期段階で明確にできるのであれば、完成後の居心地の良さや満足感に大きな差がでることになります。