放送日:2017年10月13日

「誘導灯」

 私たちの住む町には、劇場や映画館、公会堂などの観覧場、飲食や物品販売など行う小売店から、百貨店やショッピングセンターなどの大型施設、また、旅館やホテルの宿泊施設に、学校、病院、それら複合施設などなど。。。たくさんの種類の建築物が建っています。
 これら様々な用途の違う建物の中で不特定多数の人が利用する場所に共通して、必ず取付けてある矢印や走る人の同じデザインの表示板があります。皆さんも、緑と白の2色で、走る人を模ったピクトグラフを必ず見た事があると思いますが、この光る表示板を「誘導灯」といいます。「誘導灯」は建築物に火災などが発生した時に、居合わせた人を安全かつ迅速に避難出口の方向へ避難できるように、出口の位置や避難経路を示す為の照明器具のことで、万一の事故の時に我々の命を守る非常用の照明となります。
 先月の防災の日にあわせて避難訓練などで皆さんの中でも見かけた方も多いと思いますが、今回はこの「誘導灯」について少しお話できればと思います。
 この「誘導灯」は普段私たちが使っている様々な明るさや自由な形状を持つ一般の照明器具とは異なり、非常時に機能を発揮する為に、電源が落ちて館内が真っ暗になった場合も別電源によって自動点灯する仕組みや、明るさや形状、また設置条件など消防法により細かく規定されており、建物の用途、階数、床面積など規模による違いはもちろんの事、電源区分、設置位置や間隔、非常時の点灯時間などなど、建物の条件に合わせ設置される器具が決まります。その為、どこにでも好きな場所に取付けられる照明ではないのです。
 基本的には、白地に緑の矢印が大きく描かれた。通路から避難出口まで誘導する「通路誘導灯」と、緑地に白い出口が描かれた。主に避難出口上部に設置する「避難口誘導灯」の2つの表示板が使われるのですが、これらは非常時の視認性を考慮して、表示面の明るさ、寸法の基準が決められます。確かに非常時には出口がわかりやすいよう、明るく視認しやすくなければならないのですが、平常時の見え方など建築デザインとの調和を総合的に捉え判断して誘導灯を設置しないと、空間デザインに違和感を生じる原因となり得ます。
 
 例えば、劇場や映画館など室内を暗くして舞台を観覧するような場所、間接照明が施される天井面や壁面など、照明による演出効果を施す視界に重なる位置に「誘導灯」が取付けられた場合、相互の目的を相殺する結果となります。
 平成11年10月1日消防法の改正により設置間隔や大きさ規制が緩和されたことで、従来型の直管の蛍光灯が内部に入った横長の大きなパネルものから、幅が小さくほぼ真四角の形をした高輝度タイプの使用が可能になったことで、建築意匠との調和を図りやすくなりましたが、主照明などの計画も含め、設計の初期の段階で相互に機能を活かす空間づくりが今後も求められていく事でしょう。非常時に我々を助けてくれる照明器具になる「誘導灯」一度、矢印に沿って歩いて出口までの経路をたどって覚えておくのも自分や大切な家族を守る為に大切な事ですね。