放送日:2017年5月5日

「建物外装のライトアップ」

 今回は、建物の夜の表情を「あかり」で彩る、建物外装のライトアップのお話をさせて頂きたいと思います。
 一言に建物外装のライトアップといっても様々です。住宅なのか、店舗なのか、はたまた施設なのか、建物の用途によってライトアップへの考え方も変わり様相も違ってきます。また、閑静な住宅地なのか、夜の賑わいを見せる市街地、はたまた幹線道路沿いの見晴しの良い場所であるとか、立地場所の違いでも建物周辺の明るさ感が変わることで照明の演出方法、照らし方にも大きな違いがでます。その為、建物の用途や場所に十分配慮しつつ、周辺環境に調和した適切なあかるさ感の確保や外観の意匠性を考慮した配灯計画など、トータル的にバランスを考えて照明プランを行わないと、ただ明るいだけでメリハリもリズムもない、見た目にもバランスの悪い仕上がりになる恐れが多々あります。
 私の事務所でも、外装ライトアップのご依頼を受けたりしますが、その際、常に心がけていることは、見た目の恰好良さではなく、デザインに意図を持たせることです。
 一見、華美な演出もない、ただ建物を照らしているだけのように思われがちな、外装ライトアップであっても、しっかりと意図をもって計画された「あかり」は、人を引き付ける魅力や感動を与えてくれたりします。

 ここで、ひとつ事例を紹介したいと思います。手前味噌で恐縮ではありますが、それは、富山市総曲輪に建ちます「富山第一銀行ビジネスプラザ支店」の外装ライトアップとなります。こちらは、旧本店という名称から、昨年秋に耐震強化に伴いリニューアルオープンした建物なのですが、戦後の復興期に建てられた現存する歴史的建造物として、外装は当時の姿を今も残しております。その外装は当時としても珍しい、ヨーロッパの神殿を彷彿とさせる特徴的な石造りの丸柱が並ぶ美しい外観になっており、今現在も当時の姿のままある事がすばらしく、歴史的には街のランドマークになりえる建物のひとつといえるでしょう。 

 そんな素敵な建物の外装ライトアップとは何か?

 やはり、そこには周辺環境となる街灯りとの調和、またシンボル的な役割を果たす意図のある演出も重要となります。弊社ホームページ等でも竣工写真は閲覧できます。
 実はこのライトアップが照明学会で今年度の賞に選ばれまして光栄に思うと同時に、富山の建物を全国にアピールできた事がとても嬉しく思います。
 前回、「イタリアの街あかり」の都市景観など、夜の街を彩る夜景のお話をさせていただきましたが、イタリアのような石作りの歴史的な建造物が立ち並ぶ街でなくとも、この富山でも、この土地に根づいた風土や歴史を活かしたこの街ならではの良さを継承する思いが、街全体にもっと広がっていけば、素敵な夜の街になっていくのではと感じます。