放送日:2017年4月28日

「イタリアの街灯りに学ぶ」

 前回、前々回と「ミラノデザインウィーク」のお話をさせていただきましたが、今回はその開催地となりますイタリアの「ミラノ」と「ローマ」の2都市の夜の景観を彩る「街灯り」や「夜景」などのお話をしたいと思います。
 夜景といえば、大都市において建物の窓明かりが、あたかも宝石を散りばめたように光輝き、その光景は多く人を魅了する都市景観として、観光の目玉になる都市もあります。
 このような有名な都市の夜景を「100万ドルの夜景」なんて言ったりもしますが、この「100万ドルの夜景」という言葉、実は日本人が言い始めた事らしく、六甲山から見下ろした神戸の夜景が元で、当時の神戸の電灯の数が495万個。その1ヶ月の電気代を当時のレートでドルに換算するとおよそ100万ドルになったことから、電気代から由来する言葉となります。当時から夜、残業するサラリーマンが多かったのでしょうか(笑
 何はともあれ、都市の夜を灯りで彩る夜景はロマンチックな気分にさせ綺麗なものです。
それら都市の夜景はどこも一緒ではなく場所によって様相が変わります。例えば、日本でも都市景観の観点から、東京と京都の夜景が違うように、その都市の景観に対する考え方で見え方が大分変わってきます。では、イタリアの夜景はどうでしょう?
 やはり歴史ある都市景観を守るという理由で、華美な看板は一切禁止されていて、夜の街は必要最低限の照明が灯るだけとなります。先程お伝えした100万ドルの夜景のような観点から考えると、日本人にとっては「街全体で節電してるのか」と思う程暗く感じる落とし気味の明るさに映る事でしょう。しかしながら、この明るさ感こそ都市の美しい雰囲気を創り上げる為のとても素敵な「あかり演出」となっています。
 
 夜になると、温かな電球色の灯りにほの暗く街全体が照らされる中、歴史遺産となる要所の建物は下から、やや色温度の高いフラッドライトで照らすことで存在感を引き立て、一見街のランドマークとして綺麗に照らされているように見えます。確かに、イタリアの中でも都市化するミラノの夜景と歴史的観光地となるローマの夜景では趣は違いますし、建物へのライトアップも荒削りなものも多く全てが完璧という訳ではありませんが、周囲の明るさと調和を図ることで街の景観に美しさが生まれ、歴史ある街の建物と共存共栄していこうとする都市景観への考え方が創り出す「あかりの演出」の根幹といえるでしょう。
 
 日本でも各地域で、行政などが主導となり街の景観に取り組む動きが増えてきていますが、中には的の外れた単発的な取り組みも多く、街全体の調和を考え、それぞれの街の良さを表すような景観創りにはなってないように思えます。「100万ドルの夜景」という言葉の意味を電気代ではなく、100万ドルの価値がある夜景となるように、単なる「照明」の設置ではなく、その街の風土や歴史、また四季折々に応じた街灯りの演出を、街全体の取り組みとして捉え、都市景観の価値が上がっていくと素敵なことと思えます。