放送日:2015年2月20日

「安眠を誘うあかり」

 現代のように人工光源が使われるようになるまで、人は何百万年もの長い間、太陽や月の光、そして火の明かりを頼りに生活してきました。
 長い人類史の中で、人は眠る前に火を囲んで生活していた為、そうした火のあかりを見ると睡眠直前時のリラックスした状態になるように今でも身体が自然と反応します。

 以前より、お伝えしております光の色温度の違いによる特性もこれら人が本来もっている生体リズムによるものといえます。
 起きて活動する日中の太陽光に近い色温度として、昼光色などの色温度の高い明るい白色の光を浴びると、快活で活動的になり神経が高揚します。また、夕焼けの光や夜の火のあかりに近い色温度として、電球色などの色温度の低い適度なあかりを浴びると、誰もが落ち着いたり、癒されたりとリラックスモードになります。
 このように人間の生体リズムは、光に反応し、光の変化によって心理的にも制御されるようになっております。
 つまり、このような生体リズムを利用し就寝前に火のあかりを見るような光環境にすることが安眠を誘い、日々の疲れを取るにも効果的であると考えます。

 ところで、皆様は寝る前に目から入ってくる光の量を気にされたことはありますか?
 ベッドに入るまで天井の照明を白く煌々とつけたままでいたり、寝る直前までパソコンやスマホ、テレビの画面などを見ていたりして、いざ寝るときに部屋を暗くしても、なかなか眠れないと悩んでいる方も少なくないと思います。

 就寝前の光の影響については、脳の働きでいうと眼球の網膜でとらえた光の情報が脳内の松果体に送られ、その結果として、自律神経系のバランスを統制して、眠りを誘い生体リズムを調整する為のメラトニンというホルモンの分泌を制御したりする働きが生じます。
 これら睡眠のリズムを整えてくれ、安眠を誘うメラトニンは寝る前の1~2時間前から分泌が始まるとされていますが、暗くなると分泌量が増え夜になったことを全身に教え人の生体リズムを整える働きをします。しかし、寝る直前まで明るい光を目に入れ続けたりしているとメラトニンの分泌が抑制され寝つきや寝起きが悪くなったりと、不眠症や睡眠障害を引き起こす原因となり、健康にも悪影響が出てくることになるでしょう
 そうならないためにも、質の高い安眠を取ることが重要といえます。

 では、安眠する為に必要なあかりの環境とはどんなものでしょうか?
 まず、就寝前にリラックスする時間や空間を創ることがとても大切になります。それは、就寝直前にいきなり部屋を暗くするのではなく、就寝1~2時間前から、例えば天井照明などの明るい光を消し、スタンドライトや間接照明などのほの暗く柔らかいあかりに変えることで、だんだんと部屋を暗くしていき、寝るための準備期間とするリラックスした時間をあかりで演出することにより、無理なく自然と体が睡眠する状態に切り替わり、質の高い安眠を誘うあかりの空間となります。