放送日:2015年3月13日

「これからの明るさ感」

 ひと言に「明るさ感」といっても、決まった定義があるわけではなく、人それぞれの感覚の違いによって、同じ照明空間においても暗いと思う方もいれば丁度良いと思う方から様々だと思います。
 このような、人それぞれの感覚の違いを理解せず、事前に十分なヒヤリングもせず照明計画を行うと、完成した照明空間においてよくありえるクレームに「暗い」といわれることがあります。この「暗い」というクレームは設計者にとって致命的であるため、回避するのに比較的容易である方法として、明るくするため必要以上に多めに照明器具をつけておけばよい、、とする意識が働く傾向がありますが、これは間違いです。
 単に照明器具をたくさん取り付け「明るい」部屋を作ることは簡単です。しかし、建築やインテリア、家具などにせっかくこだわりを持って設計・デザインしたとしても、照明にこだわりなく無難に済ませることは、トータルに生活空間をよりよいものにするという重要な目的に対する手抜きであるとともにデザインの放棄といえます。残念ながら、このような無難な照明計画を行っている現場をよくみかけます。このような事態にならないためにも、事前に計画の段階から照明・建築をトータルに考えて空間デザインを進めていくことが重要となります。
 光源からの明るさをあらわす言葉に「照度」という言葉があります。
 この照度とは、光源から出た光がどの程度降り注いでいるかをあらわす言葉で単位面積当たりの光束で定義され、単位をlx(ルクス)といい、このlx(ルクス)の数値が高ければ高いだけ、数値では明るいということになるため、光の量を増やすため単純に照明器具やランプの数を増やすことを、明るくすることと考えてしまうのでしょう
 しかしながら、このような照明計画を行うと、不経済で面白みに欠ける空間となってしまいます。生活スタイルの多様化にともない、人が感じる明るさ感となれば、照明自体の明るさだけではなく、人の目に入る光の量や質に大きく作用されるようになってきてます。
 例えば、照らされた面の輝きや拡散反射などをあらわす「輝度」というものがありますが、この「輝度」とはインテリアの色や仕上げの種類によっても変わり、例えば、白いマットな壁・天井は一番明るく感じられ、床の色も暗いよりは明るめの色の方が明るく感じられます。またベージュや茶色などが多い部屋は、壁や天井の反射が少なくなるので、同じ種類・灯数のあかりでも暗く感じられます。
 このような、光の特性を意識して、空間と光をトータルに考えることが重要となります。つまり、今までのような「照度」だよりの照明計画から、空間を活かす「輝度」を考えて効果的に照明計画を行うことが、これからのあかるさ感といえるでしょう。