放送日:2019年7月26日

「提灯の光」

 7月も下旬に入り、暑さを吹き飛ばすように活気のある夏祭りが各地で行われている事と思います。その夏祭りの夜といえば、淡くほのかに温かい雰囲気を祭りに創りだす提灯の灯りが昔と変わらずそこにはあります。
 今回は日本人の灯りともいえる「提灯の光」について少し考えてみたいと思います。

 提灯は室町時代禅家によって普及し、特に江戸時代には庶民の中でも貴重な灯りとして広く使われ始め、暮らしの中で様々な用途に応じていろいろな種類の提灯が生まれたとされています。当時の代表的な提灯に、高張提灯、弓張提灯、また小田原提灯があり、手持ちの棒の先端にぶら下げて使う「ぶら提灯」なんて提灯もあります。

 高張提灯とは、大型の棗(なつめ)形の提灯で、長竿の先の2本の腕木に止めて高く掲げるように使う照明用具として、武家屋敷や寺社の門前、また芝居小屋や遊郭、商家の店頭などに家紋や屋号を入れ、目印として広く利用されたようです。今でも祭礼や葬礼の際使われることが多いのがこの提灯です。

 弓張提灯とは、言葉通り竹を弓のように曲げ、竹弓の弾力を利用して上下に引っかけて張り開くようにした手持ちの提灯で、形状は球形や円筒形のものなどがあります。
時代劇でよく見る「御用」と書かれた手持ちの提灯はこの弓張提灯で、そのせいか土産物としてや、海外にも輸出されている提灯です。

 小田原提灯とは、江戸中期に東海道の宿場町であった小田原の提灯職人が考え出した提灯で、小型の円筒状で、不用の時には畳んで袂(たもと)や懐中に入れて携帯できる便利な提灯として、当時の旅に多く使われた提灯のようです。江戸後期には全国的に広く用いられるようになり、土産(みやげ)提灯として、小田原名産の一つになったようです。現在でも、小田原提灯をシンボルとした夏祭りが催されるなど、今もその優美な光が灯され続けているようです。 

 他にも全国各地で提灯祭りは数多く残り、今も日本の夏を彩り照らし続けています。

 古来より、日本人が好む淡くほのかで温かい光を和紙で包んだ提灯の柔らかな光の灯影は、明るさを与えるだけでなく、日本人の心の琴線に触れる灯りとして、これからも残り続けていくのでしょうね