放送日:2017年8月18日

「盆踊りの明かり」

 皆さん暑中いかがお過ごしでしょうか。
 今週はお盆休みもあって、ご家族でお墓参りにいかれたり、家族で帰省したりと各々で夏の楽しい時間を過ごされていることと思います。
 このようなお盆の夏の時期に多く行われるイベントといえば、「夏まつり」ですね。全国各地で様々な形で催されますが、その「夏まつり」の中で代表される催事に「盆踊り」があります。「盆踊り」は古くからお盆の締めくくりに、夏の終わりを感じさせる風物詩として根付いてきました。そこで、お盆の締めくくりにあたる今回の「あかりの演出」は、この「盆踊り」をあかりの観点から少しお話できればと思います。
 昔から「盆踊り」は、町や村で行う地域の「夏まつり」には欠かせないイベントで、地域の結びつきを深める意味でも大切な場でした。
 しかしながら、最近では、少子化や若者がその土地から離れたりと、祭事を行う人の数が少なくなったなどの理由で、「夏まつり」を行うのが難しくなっている地域も増えており、「夏まつり」は行っても「盆踊り」はしないなど、町や村によって「盆踊り」が徐々になくなってきている傾向にあるようです。何だか寂しいですね。

・・・では、そもそも何故、夏のこの時期に「盆踊り」をするのでしょうか?

 「盆踊り」は単なる夏のイベントではありません。
 本来、盆踊りはお盆に帰ってきた祖霊を慰める霊鎮め(たましずめ)の行事になります。念仏踊りから踊り念仏に発展した当時の民俗芸能が、「お盆」と結びつき、精霊を慰めたり送り出す行事として今の「盆踊り」の形になったといわれています。
 15日の晩に「盆踊り」をして、16日に精霊送りをするのもその為のようです。
 また、盆踊りの晩(旧暦7月15日)は満月ですから、電灯照明のない時代でも普段明るく夜を過ごせ、月の影響で人も精神的に高揚することで、盆踊りには最適な時期であったのでしょう。そこで使われる「あかり」は、現代のように、電灯照明で夜も昼間のような明るく過ごすことのできる今と違い、満月の月明かりと、ユラユラと燃える蝋燭の行燈だけ、その「あかり」に包まれ踊る様は、とても幻想的で幽玄な雰囲気だったのでしょう。
 その名残りか、演出照明が進化している今でも中央の櫓から放射状に提灯を下げて、そのわずかな「あかり」で踊る様が定番の形となっています。「盆踊り」は、ただ楽しいだけの祭事ではなく、霊鎮め(たましずめ)の「あかり」と重なり、なぜか切なさを感じるのは、これら「あかり」が創り出すの雰囲気の力があるのでしょうね。
 現在の盆踊りは、娯楽的な要素も強く、地域ならではの風情もあり楽しみ方は様々です。とはいえ、時代が遷っても、これら日本人の情感に触れる大切な夏の「あかり」の風物詩「盆踊り」がこれからも残っていてほしいと切に願う次第です。