放送日:2022年6月10日

「光が刻む“時計遺伝子”」

 今回はサーカディアンリズム(概日リズム)について少し考えてみたいと思います。
 
 サーカディアンリズムとは、簡単にいうと体内時計の事になります。
 
 私たちは日常、地球の自転周期に合った24時間のリズムの中で、朝起きて昼活動し夜眠るという生活をしています。この生活リズムは、ただ朝明るくなったから起き、夜暗くなったから眠るといった、単純なものではなく、地球上で何億年も生活してきた生物が進化の過程で備わった形態で、私たち人間も生まれながらにこのリズムを体内で刻む遺伝子となる「時計遺伝子」をもっています。この「時計遺伝子」は、生殖細胞を除く全ての細胞に備わっているといわれ、それらはバラバラにリズムを刻むのではなく、主に1万個以上の時計細胞が集まる脳深部の視交叉上核(しこうさじょうかく)を中枢として整え、作られたリズムが信号によって送られ、身体全体でリズムが同期して働きます。そのリズムは、睡眠と覚醒のサイクルとともに、ホルモン分泌、血圧や体温調整など私たちの生理機能に関係し、24時間のリズムによって変動します。つまり簡単にゆうと、このリズムが狂うと体調を崩しやすい傾向になり、極端な例では肥満やうつ病など、様々な症状が現れ、身体だけでなく心:精神的にも影響の大きい重要な仕組みといえます。
 
 では、このサーカディアンリズムを正常に機能させるにはどうすれば良いのか?
 それは、地球の自転周期にあった太陽の光の中で生活することが基本で、目や肌から入る「光」の情報が大きく身体に作用します。
 例えば、時差ボケをおこすような国際線の機内では、ある時間になったら渡航時間にあわせ窓を遮閉し強制的に機内を暗くし、睡眠時間をつくり時差の軽減が行われます。これも「光」によってリズムを整える方法の一例でしょう。
 また日々の生活の中でも、徹夜仕事や夜更かしなどにより睡眠時間が削られ、昼夜逆転の生活を繰り返してしまうと身体に影響がおこります。この場合でもリズムを正常に戻すための方法として「光」が活躍します。

・・・光と体内時計の関係について
・朝の光を浴びる事で視交叉上核(親時計)をリセットされ、自律神経系を介して全身の細胞のリズム(子時計)に伝わり正常な体内時計にセットされる。
・メラトニンの効能とアンチエイジングの作用
・夜は真っ暗に・・・メラトニンの分泌:3lxで11%低下、100lxで88%低下
・睡眠欲求と生体リズム 2つの波形
 
 このように現在、実は病気を減らす効果的な方法として体内時計と「光」の関係が様々な分野を通して研究がすすみ、広く認知されつつあります。「光」を多く知ることは今後の健康的な生活を送る為の現代人の知恵のひとつといえるでしょう。