放送日:2020年8月28日

「続・間接照明・・・その1」

 近年、店舗照明をはじめ多くの様々な建物に「間接照明」が取り入れられています。
 間接照明が照らす光のグラデーションは、演出的にも空間にアクセントを加味すると同時に、見る人を落ち着いた気持ちにさせる癒しの効果も期待できます。
 このような理由から、新築や増改築の計画において住宅照明に、間接照明を取り入れたいとお考えの方も少なくないと思います。そこで今回から何回かにわけて、主に住宅照明の中で使う「間接照明」について、仕組みや考え方、失敗しないポイントなど「あかりの演出」の観点からご提案していきたいと思います。

 さて、そもそも「間接照明」って、どんな照明を言うのでしょう?
たまに光源が直接見えない照明やカバーで覆った行燈のような照明も「間接照明」と説明していたりしますが、照明学的にいえば、これは全般拡散の照らし方であって「間接照明」ではありません
 「間接照明」とは?その言葉の通り、光源から放射された光が直接的ではなく間接的に空間を照らす照明方法で、ランプや照明器具から放射された光のほとんどで、一度天井や壁面などを照らし、その反射光で床面や作業面など空間を照らす照明をいいます。
 ある光源に天井や壁が照らされる事で美しい光のグラデーションが浮かび、これぞ間接照明って表情がお部屋のある面に現れ、いわゆるお洒落な感じの雰囲気を見た目に創り出すわけですが、しかし、この照らされた面に光が反射する時、実は素材によっては、ほとんどの光が吸収される為、残りの少ない反射光で空間を照らすことになるのです。
 つまり、お部屋の照度など数値的な明るさだけを考えるとダウンライトなどの直接照明に比べると照明効率の悪い照明方法といえます。しかしながら、このわずかに反射した柔らかく広がる光が、空間に安らぎや癒しといった雰囲気を創り、落ち着いた空気感が現れることになるのです。 
 つまり、被照射面となる天井や壁面に現れる美しい光のグラデーションも「間接照明」の良さのひとつですが、実はそれ以上に、それら被照射面で一度反射して広がる柔らかな光こそが「間接照明」の最大の特徴であり、目に見えない隠れた効果のひとつといえます。

 近年、広まってきた「間接照明」ですが、実は人類が生まれる前から存在しています。それは「月あかり」です。「月あかり」は強烈な太陽の光が月表面で反射した反射光となります。夜間、地表に届く明るさはわずか0.5~1ルクスと少ない光ですが、このわずかな光が醸し出す情感の良さは「満月の夜」などでイメージして頂けると思います。
 そう考えると「月あかり」は天然の贅沢な「間接照明」といえますね。