放送日:2019年4月12日

「明る過ぎの罠」

 前回は「明る過ぎる住環境」と題しまして、昨今、従来光源となる蛍光灯や白熱電球から、多様性のあるLED光源に一般普及していく過程で、「人」と「光環境」の関係性について、あらためて多くの研究が行われ、健康面・省エネ性など、人の生活に大きく影響を与える事柄である結果から、従来の単一的にただ明るすぎる住環境をあらためる動きが着々と進んでおり、少しずつですが一般の方々の照明に対する意識も変化している現状にあるとお伝えしました。
 現在、従来光源にはないLEDの優れた特性によって、明るさだけでなく光の質や機能性に富んだ照明器具も増え、間接照明専用器具など従来の住宅照明にはなかった機能性や演出性に優れた照明手法も多く取り入れられる様になりました。
 しかしながら、高度成長期以降の白く明るい蛍光灯の普及に伴い広まった「照明は明るい方が良い」とした、照明にただ明るさだけを求める考え方「明るさ至上主義」的な考え方を変えずに照明計画を行うと、いくら機能性・演出性に優れた照明器具を取付けても、ただ使用する器具やランプがLEDに変わっただけで、従来光源を使用していた時と変わらず「明る過ぎる住環境」という罠にはまってしまう傾向にあります。
 そこで、今回は「明る過ぎの罠」と題しまして、主に住宅を建築する際、過度な照明計画による失敗をしない為の秘訣などお伝えできればと思います。

 ではなぜ、必要以上に明る過ぎる照明になってしまうケースがあるのでしょう。
 その大きな要因のひとつが平面図による照明計画があります。
 建物の新築・改装を行う際、工事前の計画段階で、まず必要な部屋や広さ、間取りなど、ご希望に合わせ基本となる平面図が仕上ります。この基本平面図を基に、どんな設備をどこに設置しようか?どんな家具が置けるか?内装は?動線をもっと?などなど、計画を進めていくことになるのですが、照明計画もこの始めの段階で、どんな照明をどう配置するか、部屋の形や広さに合わせ平面図に落とし込んでいくことになります。

 この時に、明る過ぎる照明となる下記のような様々な罠があるのです。
・部屋の四隅まで全体を照らす為、均等配置にしてしまう。(エアコン、換気口、扉etc)
・主に照らす必要のある箇所以外にも、必要以上に無駄な器具を多く取付けてしまう。
・生活スタイルに合わせた照明パターン(スイッチ回路分け)を考えない
・配光・照度・内装仕上げの反射率・・などなど考慮しない→メリハリのない空間完成w

 実際、設計者の中にも平面図にとらわれ照明設計してしまう方(メーカーのプランも)が少なからずいます。暗さのクレームへの怯えもあるのかもしれませんが、正しい知識をもって、本当に明るさが必要な場所はどこか?整理した上でレイアウトをしなければ、設計における本来、求めるべき住み手を満足させる快適な住環境の創造にはならないのです。