放送日:2019年2月1日

「誤解される間接照明」

 今回は「誤解される間接照明」と題しまして、現在より多くの建物に取入れられるようになった建築化照明の代表格「間接照明」について今一度、考えていきたいと思います。

 まず、建築化照明という言葉をご存知でしょうか?・・・建築化照明を説明しますと、建物内部に配線を敷設しておけば、後から直に取付けできるシーリングライトなどとは違い、建築内装の一部に穴を空けたり、器具を隠す掘り込みや幕板を施工するなど、何らかの形で建築途中に照明を仕込む加工を加え、建物と照明を一体とした照明手法をいいます。
 例えば、皆さんがイメージする天井や壁の表面を美しい光のグラデーションで演出する間接照明はもとより、天井や壁に穴を空け設置するダウンライトや足元灯なども建築化照明のひとつといえます。
 このうちダウンライトや足元灯など、直接的な光の照射で対象物を照らす照明の手法を「直接照明手法」といい、これらは明るさや効果も器具の仕様さえわかれば、比較的に仕上がりの明るさが予測しやすい照明手法といえます。しかし、同じ建築化照明でも問題になるのは「間接照明手法」です。こちらは器具の光で直接照らすのではなく、建築素材の表面反射を利用し、2次的に光を取り出す手法の為、反射させる素材の色や、器具を隠す掘り込みの高さや奥行の寸法、器具の設置位置など、微妙な寸法や設置位置、また配光等のさじ加減で、明るさ感が大きく変わることから、完成後の照明効果の予測が難しい照明手法といえます。

 ひと昔前は、商業施設などで装飾的な手段として、使われることが多かった間接照明ですが、昨今では住宅照明の中に「間接照明」を取入れた事例もかなり増えてきております。
 装飾的な要素を多く取り入れた空間となる商業施設などでは、十分に明るさを確保できているベースとなる主照明を設置しているにも関わらず、さらに間接照明による演出を行っても、全体の調和さえとれていれば良いのかも知れません。
 しかしながら、住宅に取り入れる間接照明においては、光効果に対する本質がほとんどの方に理解されず、誤解されたまま、計画されているように感じます。
 例えば、新築や改装を行う際、ある空間に間接照明を要望し計画するとします。その間接照明以外に照明を取付けますか? また、どのような照明にしますでしょうか?
 おそらく、「間接照明だけだと暗いのでは」と考えてしまい、結局その空間を隅々まで明るくするような大きなシーリングライトやダウンライトなどの天井照明を何灯も設置してしまうケースが多いのではないでしょうか。
 これでは、新しい家で生活が始まり最初の頃は間接照明も付けてみたりすると思いますが、しばらくしたら、使い慣れた天井照明の明るさで十分に生活できることから、希望してわざわざ取付けた間接照明も1年を待たずに何回か点灯する程度の無駄な照明になってしまいます。・・・心あたりのある方も少なからずいらっしゃるのではないのでしょうか。
これは、間接照明はあくまで演出的なサブの照明で、明るさを確保するのは主照明といった考え方からでしょう。確かに、お部屋の過ごし方によって、手元に十分な明るさを確保したい場合は間接照明と天井照明の併用は不可欠だと思います。
 しかしながら、間接照明だけで部屋を明るくできないと考えるのは間違いです。間接照明もその部屋の使い方に合わせ建築・照明の計画を綿密に行い、掘り込み等の寸法や取付位置、器具の仕様によって、照らす表面素材を上手く調和させることで、演出的な照明効果はもとより、十分な明るさを確保できるベース照明にもなり得る、かなり機能性の高い空間演出を可能にする建築化照明となるのです。

 間接照明・・・単純にカッコいいですよね。しかしながら、洋服などと同様に、どんなにカッコいいデザインの服だとしても、着方を誤るとカッコ悪くなるように、カッコいいはずの間接照明も建築と照明の空間調和を誤るとカッコ悪い、使えない照明になってしまうので気を付けたいものですね。