放送日:2019年1月11日

「炎に願いを込め」

 小正月(こしょうがつ)1月15日に、お正月飾りなどを持ち寄って燃やす「火祭り」の行事「どんど焼き」が全国各地で行われます。
 この「どんど焼き」、地方によって呼び名が違い、富山では「左義長(さぎっちょ)」と呼ぶことが多いようです・・・呼び名は違えども、全国で人々の様々な祈願が、この小正月1月15日に焚かれる炎に託されます。
 今回のあかりの演出は、尊い光の炎「どんど焼き」についてお話できればと思います。

 私自身、子供の頃はよく親に連れられて「左義長」に出かけた記憶が残っています。
 地域によって、お正月を締めくくる大切な伝統行事として静かに盛り上がりをみせる中・・・でも最近、特に街中では火災の危険などもあり、広い空地なども少なくなっていることから、規模の大きい「火祭り」として行うことが年々難しく廃れている傾向にあり残念です。

 そもそも「どんど焼き」とは、門松やしめ飾りなどで出迎えた年神様を、お正月飾りを焼くことによって、炎とともに見送る意味があるとされています。ただ持ち寄った物を燃やすだけが目的ではなく、年神様を見送る尊い火ということから、その炎にあたると病気をせず健康に暮らせる、この火で焼いたお餅や団子を食べると風邪をひかない、また、灰を持ち帰って家の周囲に撒くと魔除けになるなど、全国各地で様々な言い伝えがあり、無病息災・五穀豊穣を祈る日本の民間伝承行事となります。

 では、いつ頃から行われていたのでしょうか?・・・諸説ありますが
古くは鎌倉時代には行われていたとされる「どんど焼き」ですが、平安時代、小正月15日の宮中行事として、青竹を束ねて毬杖(ぎっちょう)三本を結び、その上に扇子や短冊などを添え、陰陽師が謡いはやしながら焼くという、その年の吉凶を占ったとされる行事で、その時、毬杖(ぎっちょう)を3本結ぶことから「三毬杖(さぎちょう)」と呼ばれるようになったことが起源とする説が有力のようです。

 現在では、昔の人々が、この火に託した本来の願いを忘れがちなのかもしれませんが、時代にかかわらず火は、ただ熱く燃えて光るだけのものではなく、人間が初めて自ら扱うことを可能にした光であることで、なにか圧倒的な精神性を持つ存在感を感じます。
 普段明るい電灯照明の下で生活し、直火を扱うことも少なくなった現代人も、このような機会に、「炎」の神聖な光の力を感じに、出かけてみてはどうでしょうか。