■あかりの演出

2019-06-20 第652回 あかりの演出
放送日:2019年4月19日

「なぜ?この2色」

 現在、従来までの生活に使用していた白熱電球や蛍光灯などの光源に変わり、LED光源を使用したランプや器具が我々の生活光源の主流となっております。
 従来光源と比べても、LED光源はいくつもの優れた特性があり、長寿命、消費電力削減による省エネ性能の高さ、熱や紫外線の発生を抑えることによる商品品質の高さ、また、ひとつの光源自体が粒のように小さい素子から発光することで、器具とランプが一体となる商品も多く開発され、仕様によっては器具の小型化や、様々な用途に合わせた器具形状の豊富さなど、機能性の高さを持っています。
 そして、中でも従来光源を使った照明には、真似のできない優れた特性のひとつに、調色調光機能があります。
従来光源においても明るさの調整は可能でありましたが、照明の色を変える場合、ランプ交換の手間がありました。しかしながら、調色調光機能の付いたLED照明では、手元のリモコン操作で簡単に、お部屋の明るさはもちろん光の色まで自由に変えることが可能となりました。
皆さんの中にも自宅の照明をLED照明に付け替えられて、この調色調光機能を使用している方も多くいらっしゃることと思います。
では、この調色調光機能の付いたLED照明ですが、何色の光を調整しているか?

各照明メーカー、商品によって表記の違いは若干ありますが、主に「昼光色」と「電球色」といった光の色表記がされ、この2色の光を混色することで、調色しています。

例えば、商品やカタログなどに記載されるメーカーの説明に「昼光色」は、すっきりとさわやかな光・・・「電球色」は暖かみのある落ち着いた光・・・といった具合に、光の色について説明がされ、多彩な機能で暮らしのシーンに合わせたお好みの設定がリモコンで簡単にできる。といった記載をよく見かけます。
・・・では、聞きます。好みの光を使うならば、1色でいいのでは?また「なぜ?この2色」が照明の光として使われているのでしょう? おわかりでしょうか?

その大きな理由に「太陽光」があります。有史以来、人類は何十万年もの間ずっと地球の自転周期に合わせた太陽の明るさの変化や光の色の変化の中で生活し続けてきました。
その為、太陽光による自然光を、人は心身ともに最も安定を感じる光と感じ取ります。そして光の色の変化に照らし合わせてみると、大まかに日中の太陽光のような青白く明るい光を昼間の光、夕方の太陽光または夜間に焚く炎の光のような温かみを感じる光を夜間の光と認識し、その目から光の色の情報が脳に伝わり自律神経系に繋がる大きな影響を与えているのです。例えば、就寝直前まで白く明るい光の中にいた場合、いざ寝ようとしてもなかなか寝付けなかったり、逆に朝、いつまでも暗い中にいると身体がなかなか目覚めないなど、この2色の光を、それぞれに適した時間帯や生活行為にあわせ使い分けることで、雰囲気だけでなく、健康的にも優位に働く効果が望めます。
その為、この調色調光機能の付いたLED照明は、ただ、好きな光の色に変えられる機能ではなく、人の生活における生理心理に有効的に働く、時間帯やシーンに合わせた適正な光の色を選ぶことのできる革新的な機能なのです。
2019-06-20 第651回 あかりの演出
放送日:2019年4月12日

「明る過ぎの罠」

前回は「明る過ぎる住環境」と題しまして、昨今、従来光源となる蛍光灯や白熱電球から、多様性のあるLED光源に一般普及していく過程で、「人」と「光環境」の関係性について、あらためて多くの研究が行われ、健康面・省エネ性など、人の生活に大きく影響を与える事柄である結果から、従来の単一的にただ明るすぎる住環境をあらためる動きが着々と進んでおり、少しずつですが一般の方々の照明に対する意識も変化している現状にあるとお伝えしました。
 現在、従来光源にはないLEDの優れた特性によって、明るさだけでなく光の質や機能性に富んだ照明器具も増え、間接照明専用器具など従来の住宅照明にはなかった機能性や演出性に優れた照明手法も多く取り入れられる様になりました。
 しかしながら、高度成長期以降の白く明るい蛍光灯の普及に伴い広まった「照明は明るい方が良い」とした、照明にただ明るさだけを求める考え方「明るさ至上主義」的な考え方を変えずに照明計画を行うと、いくら機能性・演出性に優れた照明器具を取付けても、ただ使用する器具やランプがLEDに変わっただけで、従来光源を使用していた時と変わらず「明る過ぎる住環境」という罠にはまってしまう傾向にあります。
そこで、今回は「明る過ぎの罠」と題しまして、主に住宅を建築する際、過度な照明計画による失敗をしない為の秘訣などお伝えできればと思います。
ではなぜ、必要以上に明る過ぎる照明になってしまうケースがあるのでしょう。
その大きな要因のひとつが平面図による照明計画があります。
 建物の新築・改装を行う際、工事前の計画段階で、まず必要な部屋や広さ、間取りなど、ご希望に合わせ基本となる平面図が仕上ります。この基本平面図を基に、どんな設備をどこに設置しようか?どんな家具が置けるか?内装は?動線をもっと?などなど、計画を進めていくことになるのですが、照明計画もこの始めの段階で、どんな照明をどう配置するか、部屋の形や広さに合わせ平面図に落とし込んでいくことになります。
 この時に、明る過ぎる照明となる下記のような様々な罠があるのです。
・部屋の四隅まで全体を照らす為、均等配置にしてしまう。(エアコン、換気口、扉etc)
・主に照らす必要のある箇所以外にも、必要以上に無駄な器具を多く取付けてしまう。
・生活スタイルに合わせた照明パターン(スイッチ回路分け)を考えない
・配光・照度・内装仕上げの反射率・・などなど考慮しない→メリハリのない空間完成w
実際、設計者の中にも平面図にとらわれ照明設計してしまう方(メーカーのプランも)が少なからずいます。暗さのクレームへの怯えもあるのかもしれませんが、正しい知識をもって、本当に明るさが必要な場所はどこか?整理した上でレイアウトをしなければ、設計における本来、求めるべき住み手を満足させる快適な住環境の創造にはならないのです。
2019-06-20 第650回 あかりの演出
放送日:2019年4月5日

「明る過ぎる住環境」

 新築や改装など、住宅を新しく建築する際、一般的に現代の建て主の多くが明るい家や空間を好まれ、その要望がそのまま設計に反映され計画がすすんでいく傾向があります。
 しかしながら、建て主の要望通りに暗くなる箇所をなくす様に照明を加えていくと、どこもかしこも必要以上に明るくして、部屋の四隅まで全体を明るくする必要のある学校や事務所の照明のような光環境ができてしまいます。これらは本来、住宅照明に求めるべき「落ち着き・癒し」といった人の生理心理に安らぎを与える環境とは逆行した「光環境」であり住空間においては不向きといえる照明計画になり得ます。
 昨今、主流の生活光源に多様性のあるLED光源が一般普及していく過程で、「人」と「光環境」の関係性について、さらに研究が進み、従来の単一的な明るすぎる住環境をあらためる動きが着々と進み、少しずつですが一般の方々の意識も変化している現状にあります。
 そこで「明る過ぎる住環境」と題しまして、今でも根強く残る過剰な照明計画・明るすぎる住環境について、考えていきたいと思います。

そもそも何故?明る過ぎる住環境は好ましくないのか?

冒頭にもお伝えしましたが、一般的に家の照明は明るい方が良いと思われる方が実際のところ多くいらっしゃることと思います。では・・・なぜ? 明るい方が良いのか?という問いに明確な答えを言える方はいらっしゃらないと思います。・・・それは、そもそも、この問いに答えなんてないからです。
照明は明るいと良くて、暗いと×とする安易な捉え方で解決できるものではなく、どんな建物においても部屋の使用目的・条件によって、それぞれに適正な照明は様々で、ただ明るいから良いというものではないのです。もちろん住宅でも、人が多く集まる時や掃除される時など、部屋全体を明るくする方が良い場合もあります。しかしながら、一つの部屋に部屋全体を照らすような照明だけである場合、例えば、昼夜問わず、家でゆっくり寛ぎたい時や特定の方が家事や作業を行う際、明る過ぎる光環境では、ゆっくり寛ぐには不向きな環境であり、また一か所で家事や作業を行う時に視界にも入らない場所を長い時間照らし続けることは省エネの観点からも良くない結果になります。このことからも部屋全体を照らすだけの変化のない明るさに良さを感じられるかと問いたいのです。
つまり、ある時間にある行為だけを行う学校や事務所のような使い方と違い、住宅照明においては、お部屋全体を墨々まで明るく照らす照明だけでなく、使用目的や時間によって、本当に明るさが必要な場所はどこか。整理した上で、時々、必要となる場所に必要なだけの照明を設置し、照らさなくてよい場所は照らさないように工夫するなど、照明計画に意図を持たせることが必要で、それによって、無駄な電気代を無くなり、使い勝手が良く、さらには空間の雰囲気づくりにも幅を持たせ、豊かな住環境の創造が可能となる照明になるのです。

それでは、なぜ?・・・いつ頃から・・このように、とにかく明るさを好む考え方が定着してしまったのでしょう?
高度成長期以降、白く明るい蛍光灯の急激な普及によって、半世紀以上続く「明るさ至上主義」という考え方、「照明はできるだけ(白く)明るい方が良い」とした間違った考え方が定着し、住宅照明においても過度な照明計画とする動きとなる大きな要因のひとつになっています。

LEDの台頭で、明るさだけでなく光の質や機能性に富んだ照明器具も増え、間接照明など従来の住宅にはなかった演出性の高い照明手法も多く取り入れられる様になりました。
しかしながら「明るさ至上主義」な考え方を変えずに照明計画を行うと、いくら機能性・演出性の高い照明器具を取付けても、ただ使用する器具が変わっただけで、従来と変わらない「明るすぎる住環境」となる罠がそこにはあります。
そこで次回は、「明る過ぎの罠」として具体的に失敗しない為の秘訣などお伝えできればと思います。
2019-06-20 第649回 あかりの演出
放送日:2019年3月29日

「時計遺伝子」

 今回はサーカディアンリズムについて少し考えてみたいと思います。
 サーカディアンリズムとは、簡単にいうと体内時計の事になります。
私たちは日常、地球の自転周期に合った24時間のリズムの中で、朝起きて昼活動し夜眠るという生活をしています。この生活リズムは、ただ朝明るくなったから起き、夜暗くなったから眠るといった、単純なものではなく、地球上で何億年も生活してきた生物が進化の過程で備わった形態で、私たち人間も生まれながらにこのリズムを体内で刻む遺伝子(時計遺伝子)をもっています。
 この時計遺伝子は、生殖細胞を除く全ての細胞に備わっているといわれ、それらはバラバラにリズムを刻むのではなく、主に脳深部の視交叉上核(しじょうさじょうかく)を中枢として整えられたリズムが信号によって送られ、身体全体でリズムが同期して働きます。
 そのリズムは、睡眠と覚醒のサイクルとともに、ホルモン分泌、血圧や体温調整など私たちの生理機能に関係し、24時間のリズムによって変動します。つまり簡単にゆうと、このリズムが狂うと体調を崩しやすい傾向になり、極端な例では肥満やうつ病など、様々な症状が現れたりと、身体だけでなく心身にも影響の大きいリズムなのです。
 では、このサーカディアンリズムを正常に機能させるにはどうすれば良いのか?
それは、地球の自転周期にあった太陽の光の中で生活することが基本で、目や肌から入る「光」の情報が大きく身体に作用します。
 例えば、時差ボケをおこすような国際線の機内では、ある時間になったら渡航時間にあわせ窓を遮閉し強制的に機内を暗くし、睡眠時間をつくり時差の軽減が行われます。これも「光」によってリズムを整える方法の一例でしょう。
 また日々の生活の中でも、徹夜仕事や夜更かしなどによって睡眠時間が削られたり、昼夜逆転の生活を繰り返してしまうと身体に影響がおこります。この場合でもリズムを正常に戻すための方法として「光」が活躍します。
※この後・・・光と体内時計の関係について
・朝増える時計遺伝子、夜増える時計遺伝子
・自律神経系への作用
・メラトニンの効能とアンチエイジングの作用
・夜は真っ暗に・・・メラトニンの分泌:3lxで11%低下、100lxで88%低下
・睡眠欲求と生体リズム 2つの波形
このように現在、実は病気を減らす効果的な方法として体内時計と「光」の関係が様々な分野を通して研究がなされ、今後「光」を知ることは健康的な生活を送りやすくする現代人の知恵のひとつといえるでしょう。
2019-06-20 第644回 あかりの演出
放送日:2019年2月22日

「ウォールウォッシャ照明」

 今回は「ウォールウォッシャ」という照明手法について考えてみたいと思います。
「ウォールウォッシャ照明」をご存知でしょうか?・・・一般的には、あまり馴染みのない言葉となりますが、これは壁面を光で洗い流すように均一に明るく照明する手法をいい、
照明器具の配置も部屋の中央や全体に均一に広げて配置するのではなく、均等間隔に並べたダウンライトなどを、あえて壁面に近い場所に寄せて、より壁面を均一に明るく見せるように演出する照明方法のひとつとなります。
 何故このような壁面照明が考えられたかというと、私たちの生活視線の多くが鉛直面であるからです。つまり床面に対して垂直な面、壁面が通常視野で多く入るため、壁面を明るくすることで空間全般の明るさ感を高めることができるからです。

もともとは天井高さのある大きなホテルやオフィスビル、また公共施設のエントランスロビーの壁面などに使用されている手法で、空間の広がりを強調するために効果的な照明とされてきました。
 その為、住宅のような比較的に小さな空間では「ウォールウォッシャ」の効果が得られにくいことから、今まではほとんど使われておりませんでしたが、最近では、仕切りをなくしてLDKなどを一体的な空間として見せたり、広い間取りのリビングルームも増え始めていることで、この「ウォールウォッシャ照明」の方法が、住宅の照明手法としても普通に取り入れられ演出されてきています。

 このような「ウォールウォッシャ」を行うのに使用する専用の器具で、「ウォールウォッシャダウンライト」があります。通常、天井に器具を取付けた場合、取付位置の真下に向けて光が照射されるのですが、このダウンライトは反射鏡の一部が加工され、光の照射方向をより壁面に向け照射できるような構造となった器具で、より壁面に有効な光があたるようになります。
このような専用器具に合わせ全般照明との明るさの調和、また照らされる壁面の仕上げに配慮するなど、「ウォールウォッシャ照明」の特性を引き出す方法により、照明計画に意図を持たせ「ウォールウォッシャ照明」を取り入れることで、空間に広がりが生まれ、省エネの上、高級感も高まります。
特にこれから新築や改装をお考えの方は、ワンランクアップした雰囲気づくりの方法のひとつとして、ご検討されてみてはいかがでしょう。
2019-06-05 第642回 あかりの演出
放送日:2019年2月1日

「誤解される間接照明」

 今回は「誤解される間接照明」と題しまして、現在より多くの建物に取入れられるようになった建築化照明の代表格「間接照明」について今一度、考えていきたいと思います。

 まず、建築化照明という言葉をご存知でしょうか?・・・建築化照明を説明しますと、建物内部に配線を敷設しておけば、後から直に取付けできるシーリングライトなどとは違い、建築内装の一部に穴を空けたり、器具を隠す掘り込みや幕板を施工するなど、何らかの形で建築途中に照明を仕込む加工を加え、建物と照明を一体とした照明手法をいいます。
 例えば、皆さんがイメージする天井や壁の表面を美しい光のグラデーションで演出する間接照明はもとより、天井や壁に穴を空け設置するダウンライトや足元灯なども建築化照明のひとつといえます。
 このうちダウンライトや足元灯など、直接的な光の照射で対象物を照らす照明の手法を「直接照明手法」といい、これらは明るさや効果も器具の仕様さえわかれば、比較的に仕上がりの明るさが予測しやすい照明手法といえます。しかし、同じ建築化照明でも問題になるのは「間接照明手法」です。こちらは器具の光で直接照らすのではなく、建築素材の表面反射を利用し、2次的に光を取り出す手法の為、反射させる素材の色や、器具を隠す掘り込みの高さや奥行の寸法、器具の設置位置など、微妙な寸法や設置位置、また配光等のさじ加減で、明るさ感が大きく変わることから、完成後の照明効果の予測が難しい照明手法といえます。

 ひと昔前は、商業施設などで装飾的な手段として、使われることが多かった間接照明ですが、昨今では住宅照明の中に「間接照明」を取入れた事例もかなり増えてきております。
 装飾的な要素を多く取り入れた空間となる商業施設などでは、十分に明るさを確保できているベースとなる主照明を設置しているにも関わらず、さらに間接照明による演出を行っても、全体の調和さえとれていれば良いのかも知れません。しかしながら、住宅に取り入れる間接照明においては、光効果に対する本質がほとんどの方に理解されず、誤解されたまま、計画されているように感じます。
 例えば、新築や改装を行う際、ある空間に間接照明を要望し計画するとします。その間接照明以外に照明を取付けますか? また、どのような照明にしますでしょうか?
 おそらく、「間接照明だけだと暗いのでは」と考えてしまい、結局その空間を隅々まで明るくするような大きなシーリングライトやダウンライトなどの天井照明を何灯も設置してしまうケースが多いのではないでしょうか。
 これでは、新しい家で生活が始まり最初の頃は間接照明も付けてみたりすると思いますが、しばらくしたら、使い慣れた天井照明の明るさで十分に生活できることから、希望してわざわざ取付けた間接照明も1年を待たずに何回か点灯する程度の無駄な照明になってしまいます。・・・心あたりのある方も少なからずいらっしゃるのではないのでしょうか。
これは、間接照明はあくまで演出的なサブの照明で、明るさを確保するのは主照明といった考え方からでしょう。確かに、お部屋の過ごし方によって、手元に十分な明るさを確保したい場合は間接照明と天井照明の併用は不可欠だと思います。
 しかしながら、間接照明だけで部屋を明るくできないと考えるのは間違いです。間接照明もその部屋の使い方に合わせ建築・照明の計画を綿密に行い、掘り込み等の寸法や取付位置、器具の仕様によって、照らす表面素材を上手く調和させることで、演出的な照明効果はもとより、十分な明るさを確保できるベース照明にもなり得る、かなり機能性の高い空間演出を可能にする建築化照明となるのです。

 間接照明・・・単純にカッコいいですよね。しかしながら、洋服などと同様に、どんなにカッコいいデザインの服だとしても、着方を誤るとカッコ悪くなるように、カッコいいはずの間接照明も建築と照明の空間調和を誤るとカッコ悪い、使えない照明になってしまうので気を付けたいものですね。
2019-06-05 第641回 あかりの演出
放送日:2019年1月25日

「照明空間 明暗の調和」

 今回は「照明空間 明暗の調和」と題しまして、主に室内照明における明暗バランス・メリハリなど効果的に空間を演出する仕組みや考え方など、お伝えできればと思います。
日本では高度成長期以降より、白く明るい蛍光灯が急速に普及するとともに「明るさ至上主義」といいますか、照明は「なるべく明るい方が良い」「明るく万遍なく照らさなくてはならない」といった安易な捉え方が定着していき、そのような感覚が今でも根強く残っております。
ただ、明るい空間が悪いというわけではなく、不特定多数の人が集まる学校やオフィスなどの均一に万遍なく室内を照らすことを目的とする空間では良いのかもしれませんが、例えば商品を陳列しているような店舗などで、均一に万遍なく室内を照明した場合、ポイントとなる商品が目立たずに魅力が薄れる結果となります。また、たくさんのスポットライトで効果的に商品を照明していたとしても、さらに明るい天井照明が万遍なく設置されていれば、せっかくのスポットライトによる強調した効果が薄れ、平凡でぼんやりとした印象になってしまいます。
つまり、暗い部分があるからこそ明るく照らした部分が際立って見え、空間の中で明るさの明暗バランスやメリハリ、リズムが生まれることになるのです。
室内の仕様用途を問わず、ただ万遍なく照明するのではなく、照らしたい場所をしっかり照らし、照らさなくても良い箇所の光を減らすといった、照明による効果的な演出をすることによって、無駄な光を無くせて省エネにもなりますし、ワンランクアップした雰囲気づくりも可能となるのです。
また、このような明るさの感覚は、室内の内装の色によっても変わってきます。白の多い内装では反射光も多くなり、比較的に少ない照明でも十分な明るさが得られますが、逆に暗めな色の多い内装は反射率が下がる為、かなりの数の照明が必要になります。そもそも暗い色の室内を全体的に明るくすることに矛盾がある為、暗い色の空間では、それなりに照明も内装と明るさの相性を考慮して計画する必要があります。
そして、光の色にも相性があり、光を照らしたい面や物の色の見え方を考える必要があります。例えば、シックな雰囲気のあるモノトーンが多い空間では、電球色よりは少し白を混ぜた4000K以上の光で構成する方が、より繊細でクールな印象を強調しやすくなり、ナチュラル系な色味や暖色系の多い空間では、電球色を使うことで、より柔らかく落ち着いた雰囲気を創りやすくなります。
このように、“光の照らし方”、“光に照らされる物の色”、“光の色”この3つの要素に明るさ明暗の調和を演出することで、魅力のある空間の雰囲気づくりが可能となるのです。
2019-06-05 第639回 あかりの演出
放送日:2019年1月11日

「炎に願いを込め」

 小正月(こしょうがつ)1月15日に、お正月飾りなどを持ち寄って燃やす「火祭り」の行事「どんど焼き」が全国各地で行われます。
 この「どんど焼き」、地方によって呼び名が違い、富山では「左義長(さぎっちょ)」と呼ぶことが多いようです・・・呼び名は違えども、全国で人々の様々な祈願が、この小正月1月15日に焚かれる炎に託されます。
 今回のあかりの演出は、尊い光の炎「どんど焼き」についてお話できればと思います。

 私自身、子供の頃はよく親に連れられて「左義長」に出かけた記憶が残っています。
 地域によって、お正月を締めくくる大切な伝統行事として静かに盛り上がりをみせる中・・・でも最近、特に街中では火災の危険などもあり、広い空地なども少なくなっていることから、規模の大きい「火祭り」として行うことが年々難しく廃れている傾向にあり残念です。

 そもそも「どんど焼き」とは、門松やしめ飾りなどで出迎えた年神様を、お正月飾りを焼くことによって、炎とともに見送る意味があるとされています。ただ持ち寄った物を燃やすだけが目的ではなく、年神様を見送る尊い火ということから、その炎にあたると病気をせず健康に暮らせる、この火で焼いたお餅や団子を食べると風邪をひかない、また、灰を持ち帰って家の周囲に撒くと魔除けになるなど、全国各地で様々な言い伝えがあり、無病息災・五穀豊穣を祈る日本の民間伝承行事となります。

 では、いつ頃から行われていたのでしょうか?・・・諸説ありますが
古くは鎌倉時代には行われていたとされる「どんど焼き」ですが、平安時代、小正月15日の宮中行事として、青竹を束ねて毬杖(ぎっちょう)三本を結び、その上に扇子や短冊などを添え、陰陽師が謡いはやしながら焼くという、その年の吉凶を占ったとされる行事で、その時、毬杖(ぎっちょう)を3本結ぶことから「三毬杖(さぎちょう)」と呼ばれるようになったことが起源とする説が有力のようです。

 現在では、昔の人々が、この火に託した本来の願いを忘れがちなのかもしれませんが、時代にかかわらず火は、ただ熱く燃えて光るだけのものではなく、人間が初めて自ら扱うことを可能にした光であることで、なにか圧倒的な精神性を持つ存在感を感じます。
 普段明るい電灯照明の下で生活し、直火を扱うことも少なくなった現代人も、このような機会に、「炎」の神聖な光の力を感じに、出かけてみてはどうでしょうか。
2019-05-31 第638回 あかりの演出
放送日:2019年1月4日

「日本の太陽」

 新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
新たな1年を迎え、ご家族やご友人と、各々に楽しい時間を過ごされていらっしゃる事と思います。
日本では年に一度、1年の終わりと新たな1年の始まりの間、ほんの一瞬に生まれる最初の夜明けとなる 1月1日(元日)のめでたい日の出「初日の出」を拝む際、その年の願い事や決意などを祈ることが多いようで、昔から日本各地で初日の出スポットに行き、初日の出参りを行う方もたくさんいらっしゃるようです。
 日の出を特別なものとして拝み祈る風習は、その年に感謝し、翌年の実りを願う、島国日本に太古の昔から営む農耕民族独特の伝統が込められており、穀物の豊穣を司る神、「年神様」が降臨することに由来するとされております。
 新旧年を繋ぐほんの瞬間に輝く、その神秘的ともいえる御来光の灯(ともしび)は、私たちを未来へ輝く光のバトンとして、皆さんをこれからも照らし導いていくことでしょう。

 日本人は昔から太陽の光を「万物の成長の元」として崇めてきました。また四季によって微妙に表情を変える太陽の光による美しい風景は、豊かな感性を育み、精神的にも「日本らしさ」をより一層感じることのできる象徴されています。
 自然の恵みに感謝しながら暮らしてきた日本人の心の拠り所となる太陽の光。
その太陽の光を象徴する日本の国旗は、「日章旗」という正式名称で、現在の白地に赤い太陽を表した日の丸といわれるデザインとなっています。
日本の国旗として使われた歴史をみると、始まりは飛鳥時代701年の正月の儀で、幟(のぼり)のような日象の旗を掲げた記録が残っています。そして平安時代までは、朝廷の象徴である錦の御旗は赤地に金の日輪のデザインであり、その後、平安末期、源平合戦の時に平氏は赤旗、源氏は白旗を使用し、平氏の滅亡で、源氏により武家政権ができると「白地に赤丸」の日の丸が天下統一の象徴として受け継がれることになったようです。古来より日本で紅白がめでたい色であることも影響していたともいわれています。
その後、幕末から明治、昭和と時代によりデザインも変化し、2種類ある状態など長く続きましたが、1999年(平成11年)に公布された「国旗及び国歌に関する法律」によって現在使われておりますデザインが日本の国旗として正式に設定されました。
 赤は「博愛」「活力」、白は「神聖」「純潔」、日の丸形は「円満」「団結」の意味が表され、日本人の願いをそこに見ることができます。
 古来より太陽を崇め続けてきた日本人の尊い思いが繋いだ日の丸、これからも新しい私たちの未来を明るく照らす光の象徴として輝き見守り続けていってほしいと思います。
2019-05-31 第636回 あかりの演出
放送日:2018年12月21日

「クリスマス 光と色」

 今回は、時節柄クリスマスにちなんだ「光と色」のお話などできればと思います。

 この時期、外を出歩くと所々でクリスマスカラーに彩られた、オーナメントにツリー、また、色取り取りのイルミネーションなど多く見ることができます。大人も子供もこの時期、クリスマスが近づくにつれワクワクし、なぜかクリスマス気分にさせられます♪
クリスマスといえば、もとはキリスト教の祭事であり、クリスマスカラーとなる赤と緑も宗教と絡んだ意味があるようです。クリスマスレッドは、キリストの血と愛という意味があり、そして緑は永遠の命や春の訪れを象徴しています。クリスマスツリーにモミの木が使われるのも、厳しい冬でも葉を残し春を待つ常緑樹の生命力の強さを象徴しているのかもしれませんね。
ところで、日本人にとっての一般的なクリスマスの過ごし方といえば、キリスト教徒の多い欧州などとは違い、特に宗教的な意味は理解せず、恋人・家族・友人らと楽しく過ごす日となるのでしょうか。。。家族と祝う本来のクリスマスとは異なる文化の形かもしれませんが、日本でも半世紀以上続くクリスマス。一年の終わりを締めくくる厳かな祭事として、宗教の垣根を越え日本でも12月の楽しい祭事となるクリスマスの楽しみ方はいろいろあります。
中でも子供達にとって、最大の楽しみのひとつといえば、やはりサンタさんからのプレゼントなるのでしょう。サンタクロースのモデルとなったギリシア人の聖ニコラスが、隣に住む貧しい家の娘さんのために煙突から金貨を投げ入れたところ、ちょうどその金貨は暖炉のそばに干してあった靴下の中に入ったという、この出来事からサンタクロースが暖炉の煙突から入って靴下の中にプレゼントを入れていくという話ができたそうです。
木造建築の文化となる日本では使われることの少ない暖炉ですが、欧米では今でも暖炉が使われている所が多いようです。暖炉は耐火煉瓦や石材などで壁に作られた炉で、薪などを燃やしその熱で室内を暖房する設備ですが、暖房設備としてだけでなく、その装いはインテリアとしても重宝され、暖炉の近くで佇み、やわらかい温かさに包まれる中、燃える火を眺めていると、その光によって癒されます。そこに厳かなクリスマスソングでも流れれば、もぉ最高な空間となるのでしょう。
ちろちろと燃える火を眺めていると人は心から癒されます。日本では暖炉のある空間づくりは難しいでしょうが、同じく柔らかく温かく観ていると安らぐ光となるキャンドルがあります。年に一度のクリスマスは温かなキャンドルで演出し、今年は光と色に包まれるひと味違うクリスマスを大切な方と過ごしてみてはいかがでしょう。