■あかりの演出

2018-08-31 第617回 あかりの演出
放送日:2018年7月27日

「子供部屋の光」

 現在、LED照明やスマートフォン・TV・PCに使用されるディスプレイなど、これらデジタル光源の急激な普及によって、我々を取り巻く光環境も急速に変化し続けています。
 中でもLEDに代表されるこれらデジタル光源は、目に刺激を与えるとされるブルーライトの比率が高いとされ、従来の光源と比べてみても、目の健康に対して配慮する必要性が増しているといえます。
 特に成長過程にある子供の目と光の関係は、生涯にわたって目の健康に非常に影響を及ぼす内容であることから、これら光環境の変化に応じて大人が正しい知識を持ち、子供に良い光環境を提供することは子供の健康を守る上でも重要な事柄といえます。
以前、生後まもない赤ちゃんの時期から幼児期にかけて、それぞれの成長段階に応じた最適な光環境のお話をさせて頂きましたが、今回はその続編としまして、小学校に上がった頃、学童期に最適な光環境とはどんなものか考えてみたいと思います。

 子供も小学校に上がった頃から親の目を離れ子供部屋で過ごす時間も増えていきます。その子供部屋の用途といえば、主に勉強と睡眠になるでしょう。では、それぞれのシーンに適した光環境とはどんなものか考えていきたいと思います。
まずは、勉強が快適に行える光環境づくりの基本としては、窓の向きや配置によって違いはありますが、直射日光が当たらない場所に机を設置することが基本となります。日々の直射光による照り返しによって目を傷める原因にもなります。また、最近のような猛暑日は特に窓からの熱をもろに受けることで気力も減退しがちです。その為、日中勉強をする際は、直接日射を受ける南側・西側の窓に向け机を配置することを避け、窓には光を透過するカーテンやロールブラインドを使用し、柔らかな光を部屋全体に拡散させることで、手元を照らすタスクライトとの調和も取れ、目に優しく勉強を行なえる光環境が出来上がります。夜間おいても同じように、机の照り返しや明暗のコントラストが大きくならないように、均一に部屋全体を適度に照らす照明と、机の上で勉強する為の手元を明るくする照明を併用して、それぞれに最適な光環境を創り上げる必要があります。その際、大人が照明の位置・角度・明るさなど、光の調整に関して適切にアドバイスをして、時間帯や環境の変化に合わせ子供が自分で心地良い光環境を調整できるようにしてあげたいものです。

また、睡眠中には成長に必要なホルモン分泌がされ、自律神経系の発達に深く関わることからも、質の良い睡眠を得ることは成長過程にある子供とっては非常に大切な事柄になります。そして質の良い睡眠を得るには、光環境が大きく関わります。
睡眠中は部屋の照明は消して光を目に当てないようにします。わずかな光でも目は調整をし続け、疲れてしまうと考えられるからです。そして最も重要なのは就寝前の光環境です。就寝前は、しっかり明るさを確保する勉強時間の光環境とは異なり、夕日のように赤みを帯びた電球色とした適度な明るさの温かみのある光環境で過ごす時間を持つことが大切になります。
人は日中の明るい光から夕暮れ時の光に環境が変化することで、目から入った光の情報が脳に伝わり、夜が近いと認識し副交感神経が働きはじめ、自然と身体が就寝をする準備をはじめます。その為、就寝の直前まで昼間のような白く明るい環境で過ごし、いざ照明を消して寝ようとしても、なかなか寝付けず、ホルモン分泌が不十分で安眠を妨げる結果となります。夕食後やお風呂から上がった頃から就寝までの間は出来るだけ、白く明るい光を避けて、電球色の適度な光の中で過ごすように、日々の生活の中で、大人が光の調整を進んで行い快適な光環境づくりを習慣にすることも大事かと思います。

子供部屋の光環境は、子供の心身に大きな影響を与える大事な要素になります。光のコントロールを賢く行って子供の活き活きとした健康的な生活を実現したいものですね。
2018-07-20 第616回 あかりの演出
放送日:2018年7月20日

「光の浮世絵師」

 レンブラントという西洋画家をご存知でしょうか?
レンブラントは17世紀オランダを代表する画家で「光の画家」「光の魔術師」などの異名を持ち、繊細な光と影の描写を巧みに使い、より写実的に活き活きとした作品を数多く残しています。当時の西洋画の中には、光と影を繊細に表現し、明暗を印象的に捉えた作品が数多くあるようですが、日本でも特にこのレンブラントの光の効果を巧みに表現した西洋画の影響を受けた画家も数多く存在します。前にご紹介した小林清親もその一人で、錦絵に西洋絵画の遠近法、陰影法、明暗法といった光で表現する技法で光線画を生み出しました。その彼の活躍した明治時代よりも以前の江戸時代に、実は同じく西洋画の影響を受けたとされ、作品に光を独特に取り入れた浮世絵師がいました。
そこで今回は浮世絵に光と影を表現した女性浮世絵師「葛飾応為=かつしかおうい」について少しお話したいと思います。
浮世絵師といえば、神奈川沖の荒波や四季折々の多彩な富士山などを描いた「富嶽三十六景」を代表作に持つ葛飾北斎が世界的にも有名ですが、この北斎の三女(えい)が実は葛飾応為という画号をもつ女性浮世絵師であったことはあまり知られていないようです。
応為の描く浮世絵には、北斎に「美人画にかけては応為には敵わない」と言わせるほど優れた美人画が多く、作品としては世界に約10点ほどしか残っておらず少ないのですが、
それらの作品は、女性ならではの繊細なセンスの良さを伺える作風で、特に光の描写に優れています。
当時の浮世絵は、平面的で昼間のような明るい時間帯を描いたものがほとんどでしたが、
応為が描いた「夜桜美人画」は暗闇の中に浮かび上がる桜と女性、灯篭の光、を陰影の濃い表現で美しく表しています。
 星空の下、石灯篭の白い光が傍に佇む歌人の顔や手元、桜を闇の中に浮かび上がらせて着物の裾を灯篭の仄かな光が照らしています。また、夜空の星は白色、紅色、藍色など、5種類程に描き分けた点描となっていて、星の明るさの等級さえも細かく表現しています。
 他にも夜の吉原を描いた「吉原格子先之図」では幻想的な光の効果を、誇張した明暗法と細密な描写により表し、当時の浮世絵にはなかった光の表現方法で描かれています。

応為はこれらの作品からも西洋画法への関心が深かかった推察され、当時では珍しく平面的な浮世絵に光と影の陰影を美しく描いた「光の浮世絵師」として、現在その才能が再評価されているとのことです。多くの西洋画のように光を写実的に表現したものとは違えど、その昔、江戸の時代に西洋画に影響を受けたとはいえ、光を日本独自の美の感覚によって、さらに美しい描写により表現していた絵師が存在したとは驚くべきことですね。
2018-07-20 第615回 あかりの演出
放送日:2018年7月13日

「花火の光」

 今回は夏の夜空を彩る夏のあかりの風物詩「花火の光」のお話をしたいと思います。

毎年、この時期、皆さんの中にも各地で行われる花火大会を楽しみにされている方も多くいらっしゃると思います。

諸外国では冬をピークに年間を通じて消費されている花火ですが、日本では今頃から8月末にかけて、催される花火大会のそのほとんどが夏に集中しており、その他の季節はあまり需要がないようです。・・・花火といえば夏といったイメージがありますよね
その理由のひとつに、かつて納涼開始を祝うとともに水難者の供養や水難事故防止を願う水神祭を兼ねた行事「川開き」に使用されていた名残だといわれています。
その昔、江戸時代の頃の「川開き」で最も規模が大きく有名だったのが、江戸幕府8代将軍・吉宗の時代から両国で行われていた「川開き」らしく、玉屋と鍵屋が両岸に分かれて競って打ち上げる美しい花火を江戸の多くの人々が楽しんでいた記録も残っています。 当時屋形船1艘あたりの利用料が5両(約40~50万円)だったにも関わらず、この頃描かれた浮世絵に、川面に無数の船が浮かんでいる「川開き」を描いたものがあり、かなり特別な娯楽のひとつだったと思われます。
現在では隅田川花火大会という名前で親しまれ、毎年100万人近い人出がある夏の風物詩となっています。
ところで、近頃の花火って進化しているなと感じませんか?
大きさや広がりだけでなく、飛散するタイミングや明るさ色、形、また音を同調させるものなど多種多様に趣向を凝らした花火が増えており多くの人々を楽しませています。
このように現在、技術の発達で様々な花火の表現も増えているようですが、あの大きな音の迫力と、華やかに輝いて瞬時に消える光の儚さをあわせ持つ日本の夏花火の美しさは、今も昔も人の情感を高めて感動を与えてくれる、日本人の美意識が創り出した文化であり、世界に誇れる伝統芸術のひとつになるのでしょうね。
とにもかくにも、日本各地で毎年この時期に行われる花火大会、先程お伝えした「隅田川花火大会」のような全国的にも大きなイベントから、地元に根付いた親しみある花火大会まで、規模や内容も様々ありますが、それぞれに良さを感じます。それらは昨今のデジタル光源を用いた大規模なイルミネーションだとしても決して真似のできない迫力と自然発火の妙による感動と美しさがあります。
日本人の心に響く、夏の贅沢な光と音の饗宴「花火大会」大いに楽しみたいものです。
2018-07-20 第614回 あかりの演出
放送日:2018年7月6日

「蛍の光」

7月に入り、寝苦しい日も続いておりますが、皆さん暑中いかがお過ごしでしょうか?
7月初旬からこの暑さとなると今年の夏はどうなるのかと、思いやられます。
そんな暑い夏の夜の間にだけ見られる、ゆったりと優しく点滅しながら飛び交う幻想的な光に、蛍の光があります。
綺麗でゆるやかな流れの川の水際で仄かに点滅する蛍の光は、見ている者を魅了して、暑さを忘れさせ、一時の涼を誘う、日本の夏を彩る「あかり」の風物詩といえます。
そこで今回は、夏の夜のあかり、蛍の光について少しお伝えできればと思います。

 日本には40~50種程の蛍がいるといわれていますが、富山でもよく見られ、より光る蛍にゲンジボタルとヘイケボタルがいます。この2種類の蛍を鑑賞できる時期が6月~7月頃の間で見られるようなので、今がまさに蛍を鑑賞するには絶好の時期になるようです。
・・・ところで、蛍はなんで光るかご存じでしょうか?
主な目的は「求愛などのコミュニケーションの為」だと言われており、一般的に活発に飛びまわるのがオスで、メスを探す時に点滅発光するようです。成虫の寿命が1、2週間という短い期間なので、この短い間に求愛行動を必死にしていると考えると、美しい光の乱舞の裏に儚さと共に親しみを感じてしまいます。
 蛍は、おなかの発光器の中にある発光する物質(ルシフェリン)と、発光を助ける酵素(ルシフェラーゼ)があり、これらと体の中の酸素が反応して熱を持たない発光現象を行うようです。その美しく点滅する光り方は、余韻を残し見る人に心安らぐ癒しの効果があるとされています。
私が幼少の頃は富山市の中心部でも、蛍をよく見かけ手の平の上で優しく点滅する蛍の光を楽しんだ事を思い出します。
しかし残念ながら今では、街中で昔のように蛍を見られなくなりました。
その要因は様々ありますが、主に都市整備の過程で街を流れる小川なども減り環境も変わったことで、悲しいかな・・・きれいな水のあるところに生息する蛍にとって街中は住みづらい場所になっているのでしょう。しかしながら現在、このような現状を憂い、日本各地で環境改善の試みがされ始めてはおり成功した場所も数多く生まれてはいるようです。
特に、他県に比べてもゆたかな水環境をもつ富山県では、まだまだ蛍を鑑賞できる名所も数多く点在しているようなので、暑い今年の夏は、大切な方やご家族などとご一緒に、一時暑さを忘れさせてくれる夏限定の「あかり」蛍の光の観賞に出かけられて、心に郷愁を呼び起こす素敵な夏の思い出のひとつに加えてみてはいかがでしょう。
2018-07-20 第613回 あかりの演出
放送日:2018年6月22日

「化粧肌と光」

化粧品のCMなどで「くすみのない明るく透明感のある肌に」なんてキャッチフレーズを耳にしたりしませんか?
実はこの言葉の奥には、化粧肌と光の密接な関係性があります。

光に照らされ肌を光が透過する際、肌表面と肌内部の両方で光をきれいに反射させることで美しく見えるされています。つまり、くすみのない肌で光をどのように反射させるかによって「明るく透明感のある肌」に近づくのかもしれません
そこで今回は、透明感のある化粧肌と光の関係性について考えてみたいと思います。

一般的に肌は光をどのように反射するか? 実は肌表面で反射する光はごく微量で、その光のほとんどが肌内部にまで浸透し、散乱を繰り返しながら一部が外部に反射するといった仕組みのようで、例えば
きめの粗いくすんだ肌の場合は、肌内部で光の進行を妨げられ、光が奥まで届かないことで、肌内部の反射光が少なくなります。逆に
きめの細かいくすみのない肌の場合は、光がより深い肌内部まで浸透することで、多くの光が均一に顔全体から外部へ反射します。つまり肌内部からの反射が多いと血色の良いツヤと透明感のある顔として人の眼には認識されるようです。
そこで、肌内部の反射を効果的に補い、ツヤと透明感のある顔にするための化粧品が各化粧品メーカーによって開発され続けています。
人の肌で反射させる光といっても様々あります、日中の白く明るい太陽光から赤味を帯びた夕日、また人工照明においても様々な色を持つ光がありますが、これらの光は全て虹の7色の代表される各色の比率の違いによって、光色が変化しています。その中でも特に日本人の肌色を美しくみせるといわれる色が赤とされています。
そこで、あるメーカーでは透明な顔料で色を調整できる干渉色をファンデーションに配合して自然な顔色を演出することのできる商品を開発したり、また他のメーカーでは、肌を美しく見せる赤色光を多く肌内部に透過・反射させ、肌色をくすませる色・多くは黄色光を吸収する特性を持つ「赤色パウダー」と肌表面で光を均一に反射させる「白色パウダー」を組合せた化粧品を販売しているそうです。
また、健康的なお肌は水分量が多く、肌内部の反射が多くなることから、肌の保湿を高める商品なども様々あるようです。
素肌づくりに気を配るとともに、各々に合う化粧品を利用しつつ、光の反射を効果的に取り入れてみるのも「あかりの演出」を楽しむ一歩になるのかもしれませんね
2018-07-20 第610回 あかりの演出
放送日:2018年6月1日

「子供と光」

 先週より、子供の目と光の関係を基に、子供の成長過程に応じてどのような光環境が望ましいのかお伝えしております。そこで今回は満6歳頃までの幼児期と光の関係性をもとに、最適な光環境はどんなものか考えてみたいと思います。
子供の目の生育上、視力や機能が安定するのが6歳頃までであることから、幼児期は大変に重要な時期となり、目に多くの影響を与える光環境に対して適切な配慮が望まれます。
 中でもこの幼児期に質の高い睡眠を取れる生活リズムとそれらを整える光環境の関係はとても重要な内容のひとつとなるのです。
しかし現在、日本の子供の就寝時間はかなり遅くなっています。午後10時以降に寝る幼児は全体の3~4割になっているという調査結果も挙げられています。この原因としては、ひと昔前に比べても社会全体が夜型よりな生活スタイルになっている現状が挙げられます。ご家庭においても気軽にインターネットやゲーム、TVなど夜遅くまで利用する人が増えたことで、大人と同じく子供までも夜遅くまで活動する生活習慣になってしまっている傾向にあるからです。就寝時間が遅くなることは、もちろん質の良い睡眠時間が減ることになり、子供の健全な成長に様々な悪影響を及ぼす結果となります。
人が質の良い睡眠を得るよう分泌されるホルモンに「メラトニン」があります。この「メラトニン」が正常に分泌されることで、安眠を誘うほか、新陳代謝を促して、疲れも取れ、病気の予防など、心理面・健康面においても優位に働くとされています。特に1歳から5歳までの間に最も多く分泌されることから、この幼児期に十分なメラトニンの分泌が得られるような生活習慣づくりの配慮が望まれます。
ある調査結果に、幼児期に就寝時間が遅かった子は小学生になっても遅く寝る傾向が強くあり、就寝時刻の遅い子供は成績も低く、早い子供は成績が高いといった統計もあり、睡眠の質が学習能力に関係してくるという結果も挙げられます。幼児期に遅く寝ることが、その後の悪い生活習慣につながることを考慮すると、幼児期の規則正しい生活とそれらを整える光環境の役割はとても重要な内容となるわけです。
このメラトニンですが、夜間に強い光を受け続けると分泌量が減少してしまう性質があります。つまり、夜・就寝までの間、部屋全体を照らすような照明の中、昼間のように明るい光環境で過ごすことは安眠を妨げる結果となるのです。
そこで、メラトニンの分泌量を上手く増加させ、お子さんの安眠を誘う「あかり」による環境づくりの方法をお伝えします。130年程前に電灯照明が普及するまで人類は何十万年以上も太陽の光とわずかな火の光の中で生活してきました。その為、夕方から夜間にかけては、夕日や炎の光のように適度な明るさの赤みを帯びた光色の中で生活することが健康面・精神面においても安定するといえます。つまり夜間、この赤みを帯びた適度な光環境にお部屋の照明を調整するだけで、目から入った光の情報が脳に伝わり、夜になったから睡眠の準備に入ろうとし始め、メラトニンの分泌が高まっていきます。実生活で行うとすれば、せめて就寝する2~3時間前、お風呂上がりや夕食が終わった頃からお部屋のあかりを適度な明るさの電球色の柔らかな光に変えて、白く明るい光を避けるだけで、効果的に安眠を誘う体質づくりに繋がるようになります。
ただし、睡眠薬など即効性のあるような薬をと違い、毎日の規則正しい生活の中で改善されるものなので、せめて2週間~1ヶ月程度はこの光環境を続けてみてください。気が付くといつも寝付きの悪かったはずのお子さんがすぅーっと寝入るようになると思います。
幼児期は目を育てる大切な時期です。夜型の大人の生活に子供を巻き込まず、正しい認識を持ち子供の発育を助けるよう、しっかり光・環境を整えていってあげたいものです。
2018-07-20 第609回 あかりの演出
放送日:2018年5月25日

「赤ちゃんと光」

 ここ数年の経過だけをみても住宅用の一般照明においてLED照明が主流の生活光源となるとともに、目に刺激を与えるとされるブルーライトの比率が多いスマートフォンや薄型TVに使用されるデジタルディスプレイの急激な普及によって、我々を取り巻く光環境も急速に変化してきております。このような光環境の変化に伴い、目の健康に対しての配慮の必要性が増している現状にあります。
特に成長過程にある子供の目と光の関係は、生涯の目の健康に非常に影響を及ぼす内容であることから、大人が正しい知識を持ち、子供に良い光環境を提供することは子供の健康を守る上でも重要な事柄と考えます。
今まで、このコーナーでも子供の目と光の関係などのお話を何度かさせて頂いておりますが、子供の成長段階に応じてどのような光環境が望ましいのか、どのような照明が良く注意する点は?など、今一度、子供の目と光の関係について考えていきたいと思います。

まずは、生後まもない赤ちゃんに最適な光環境とは・・・?
生まれたばかりの赤ちゃんは、明るさと暗さは区別できるものの視力は0.02程で視界はぼんやりしていますが、1歳頃には視力も0.2程となり物の形の区別ができ始め目で追うようになります。色彩認識についても最初はモノトーンの世界から、「赤」を認識できるようになり、次に「黄」「緑」「オレンジ」といった暖色系統の色を認識したのちに、さらに「紫」「青」といった寒色系統の色を認識していくと言われています。
このように生後1年ぐらいにかけて五感を感じ取る脳の神経回路が急速に発達していくことになります。この成長過程の中で、五感のひとつ視覚から入る情報はとても多く、その外部刺激となる目から入る光の情報は脳の健やかな成長に密接に関わる為に、最適な光環境づくりは非常に大切な事柄といえます。
 そこで基本となるのは「サーカディアンリズム=体内時計」を整える光環境づくりです。
「寝る子は育つ」というように成長過程にある赤ちゃんにとっての睡眠はとても重要で、神経系のリズムを育てる質の良い睡眠を誘う光環境づくりはとても重要となります。
人は朝・昼は明るく、夜は暗くといった太陽の軌跡の中で生活してきたことで、それらに合わせた光環境の中で生活することが健康的にも優位に働くとされます。その為、現代のような照明で夜も昼間のように白く明るくした環境に置かれる事は、赤ちゃんにとって適切な光環境とはいえません。リズムの良い質の高い睡眠を取らせる為には、太陽が沈むように夕方からは赤味を帯びた電球色の照明として明るさを徐々に落としていき、最後には真っ暗な部屋で寝かすことが理想的な環境といえます。

例えば、常に仰向けで寝ている生後まもない赤ちゃんにとって、部屋の明るい天井照明は、常に昼間太陽を見続けているような環境といえます。生後3~4か月までの赤ちゃんは「強制注視」という性質をもっており、天井吊りの照明器具の豆電球のようなわずかな光であっても、凝視してしまい、刺激となって睡眠の質を落としてしまう結果になります。
もし夜間常夜灯を点けるのであれば、コンセント式の足元灯やクリップ式のスポットライトを天井に向けるなどの対策や、普段から赤ちゃんの目に直接光が入らないようにする工夫に心がけたいものです。

人の体内時計は母親のおなかの中にいる時から作られはじめ、生後6か月あたりで整えられるといわれています。この間にある程度生活リズムを整えてあげないと、その後、夜泣きが頻繁に起こったり、乳児から幼児へ成長していく過程においても寝つきが悪くなったり、健康面でも悪影響を与える恐れがあるので注意したいものです。
浅い眠りで昼も夜も関係なく寝たり起きたりする赤ちゃんの育児はとても大変な事です。
連日夜泣きされたりすると親にとってはとても辛いことです。しかし、夜泣きしなければならない状況下におかれた赤ちゃんは、親以上に辛いのだと思います。
子供に応じた光環境を正しく整理・改善してあげて、健やかな成長を促して快適に生活できるようにしてあげたいものですね
2018-07-09 第608回 あかりの演出
放送日:2018年5月18日

「陰影を楽しむ」

 今回は「陰影を楽しむ」と題しまして、これからの照明空間の在り方など、お伝えできればと思います。
古来の日本建築では、太陽からの強い日差しを軒の出を深くすることで、直接室内に入れることがないように作られ、庭の地面や広縁などに反射した適度な光を室内に導いていました。その適度な光を、障子に透過させることで、さらに柔らかな弱い光となって室内に広がり、そのほの暗い環境で生まれる陰影の中から、日本人の細やかな感性が創り出されたとされ、自然を受け入れ順応しながら、その自然な光環境を繊細な感性により生活に活かされてきたことは日本人にとって忘れてはならない大切な文化のひとつといえます。

 しかしながら現在、日本の光環境をみると、高度成長期以降の蛍光灯の普及により明るさを求め続けた結果、蛍光灯の白い光で夜を昼間のように明るく照らす行為が、いつからか照明はとにかく「明るく照らす」ものが良いといった、間違った捉え方が定着してしまった為に、明るすぎる光環境となってしまい、震災以降省エネの機運が高まる中においても、未だにその名残は根強く残っている現状にあります。
我々日本人は古来より、適度に柔らかな光を建築の中に取り込みながら、そこから生まれる陰影の中に「安堵感」や「癒し」といった心の豊かさや美しさを演出してきました。
今こそ、こうした日本人の持つ光への感覚を思い出し、明るさ至上主義といった間違った既成概念に囚われず、適切な照明とは本来どうあるべきかを考え、微妙な光への感受性を大事にした心豊かにする光環境づくりが今後より多く求められていくことを願います。

 光は暗い所があってこそ明るく感じます。全てを照らすのではなく、必要な所に必要な光をつくり、ほの暗さと明るい所を創り出すことで適度な陰影が生まれ、明るさをより効果的に演出することができます。また自然光を効果的に取り入れつつ、天候や時間により明るさの調整や光の色を変化させることで、よりその効果は高まります。例えばこのような方法により、様々な情報が溢れるストレス過多で余裕のない現代の生活の中でも、夜間、刺激の強い昼間のような明るい白い光に囲まれる環境ではなく、もしほの暗い微妙な明るさ感を味わうことで、「安堵感」や「癒し」といった感覚に気づき、その陰影を楽しむ心の余裕が持てたとしたなら、より豊かな生活環境の実現に近づくことと考えます。
 震災以降、今の明るすぎる光環境に異議を唱える動きは照明業界では高まっているものの、未だに一般的な認知・理解には至っておりません。そこで目に見える環境を徐々にでも残していき利用者の方々に理解と共感を得られるよう、適正な光環境の啓蒙に今後も注力していければと思います。
2018-06-19 第605回 あかりの演出
放送日:2018年4月27日

「続・光のおもてなし」

 前回は、心の日本文化のひとつ“おもてなし”の演出に光を用いた千利休の茶の湯の教えや茶室における光の演出効果のお話などお伝えしましたが、今回は、人工の電灯照明を用いた現代の“光のおもてなし”とはどんなものになるのか?と考えてみたいと思います。

さて、現代の光、電灯照明を用いた「光のおもてなし」というと、先進的な技術を用いて、作為的な演出を行うようなものをイメージされる方もいらっしゃると思いますが、そういう事ではなく、行燈の光や自然光を利用していた千利休のいた時代とその本質は変わらず、まずは、大切な人や客人をお招きする際、その方々のことを思い快適に過ごして頂けるような環境づくりをしつらえ、それらに適した光環境の設定を準備しておくことが“光のおもてなし“に大切なことと考えます。
確かにLED照明に代表されるデジタル光源によって、千利休の時代とは比べものにならない程、より繊細な光環境の設定が可能になっています。季節や天候、時間、その空間に集う人の年齢、性別、職種など、様々な場面や要素に応じた、極め細やかな心を込めた「光のおもてなし」の演出を実現することの出来る機能はあります。しかしながら、これら光の本質を理解してどう扱うかは、今も昔も変わらず、使い手の意識により表されます。

季節や天候、時間帯に応じて、適切な明るさ感や光色をしつらえる事はもとより、お招きする方の年齢や性別、趣味・趣向などに配慮することも大切な要素といえます。
例えば、高齢者になると高い割合で、何らかの形で白内障などの症状を持っているといわれ、物がかすんで見えづらくなる、光がまぶしく感じられる、暗いところでは物が見えにくくなるなどの特徴が挙げられます。また、作業面などの明るさは20歳を基準にすると40歳を起点に10年ごとに約2倍、3倍と必要とされる明るさ感が高くなります。その為、それらを考慮した光環境の設定が望まれます。
しかしそれは、ただ部屋を全体的に明るくすれば良いというわけではなく、例えば、会食の時など、テーブルにお料理が置かれているとします。そのお料理を照らす卓上への光と周囲からの光が調和を図らず混ざり合うと、対象物の彩度が下がり見えにくくなるといった現象が起きます。この場合の対応としては、卓上のお料理を照らす光をやや強めにする反面、周囲の照明を適度に控えた明るさにすることで相対的に周辺光の散乱が減り、お料理を華やかに引き立て見やすくなります。このような光による配慮を、様々ある場面においても、その時々に必要な光環境に創意工夫を加味することで、優しく思いやりのある“光のおもてなし”を実現できるのではないかと考えます。
2018-06-19 第604回 あかりの演出
放送日:2018年4月20日

「光のおもてなし」

 今回は「光のおもてなし」と題して、光による“おもてなし”とは何か?
「あかりの演出」の観点から少し考えてみたいと思います。
 「おもてなし」とは? 「もてなし」に丁寧語の「お」を付けた言葉であり、その語源は、平安、室町時代に発祥した茶の湯から始まったと言われ、大切な人への気遣いや心配りに「表裏なし」、つまり、表裏のない「心」が築いた世界に誇れる日本の文化といえます。
茶の湯といえば千利休が有名ですが、その利休が茶の教えに残した「利休七則」の中の一つに「夏は涼しく、冬暖かに」という心得があります。客人のことを考えて隅々にまで気を配り、客人に喜んで頂くことが肝要であるという意味を込めた言葉です。その表の言葉で考えると、空調のない時代、夏暑いときは打ち水をして涼を誘い、冬寒いときは温かい菓子を出すなどして、客人が少しでも快適にその場を過ごせるよう、その季節にあった気配りを欠かさなかったそうです。また、ある逸話に夏の早朝、利休が客人を招いた際、茶室に向かう竹垣にたくさん咲いているはずの朝顔が全て摘み取られているのを観て不快に思った客人が、躙り口を潜った茶室の中に見たものは・・・朝日に神々しく照らされ佇む、床の間に掛けられた一輪の朝顔でした。つまり、その一人の客人の為だけに、早朝全ての朝顔を摘み取ってまで、しつらえた総合的な演出だったのです。このことからも、心を込めて目に見えない心を目に見えるものに表し、その努力や舞台裏は微塵も表に出さず、主張せず、もてなす相手に気遣いをさせないことが、「おもてなし」の本質といえるかもしれませんね
この逸話でも、朝日で朝顔を照らしたとありましたが、利休が自ら作り上げた2畳の間に床を設けた狭い茶室「待庵」は、もっと微妙で繊細な光の演出を可能にする空間となっています。茶室もそれまでの北向きから南向きに変え、種類の違う障子窓を複数設け、時間帯や季節による、窓から入る光の量や方向を調整し、時々に必要な光環境を創り上げたとされています。また、室内は黒っぽく着色した土壁として、光をあまり反射させないことで、光と影の対比がかなり強い状態になり、光の演出効果が、反射光に邪魔されず最大限に活かされる創りだったようです。このことからも、利休は「おもてなし」に光の演出を取り入れた総合演出家だったのでしょうね。

ではここで、現代の光による「おもてなし」を考えてみると、LED照明によって、より繊細な光環境設定が実現でき、様々な場面に応じた演出をすることが可能になっています。
季節や天候、時間、食事に集う人の年齢、性別、職種などの様々な要素に応じて、心を込めた「光のおもてなし」ができると考えます。そこで次回は、現代の人工光源を使った「おもてなしの心を表す光」とはどんなものか?・・・お伝えできればと思います。